シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



どこまでも矛盾ばかりの紫堂本家。

僕が向かうのは、その中心に座す人物。


紫堂家7代目当主、紫堂匡(しどうきょう)。


紫堂財閥の総資産を拡大させ、紫堂の生きる道をその手腕で切り拓いた、随一の切れ者と謳われた男。

そして櫂は、その総資産を更に倍にまで拡大させ、既に当主をも超越していると噂されていた。


櫂に名声を奪われた男は、元より情でなど動くことはなく。

櫂を追い詰めて見殺しにした挙げ句"アレ"呼ばわりにするに至る非情さを際立たせて。


非情さの根底にあるのが、男としての矜持の問題だけではなく、櫂や久涅の出生に絡んでいるのであるならば、余計に櫂に対する感情は澱んでいるだろう。

"約束の地(カナン)"を躊躇なく爆破させた理由が、例えば久涅から連絡を受け、あの地にて櫂の生存を知ったからというのであれば、執拗に息の根を止めたがるこんなに最悪な父親はなく、

もしも櫂の生存を知らずの爆破であったとならば、生者がいる土地の破壊を笑みを浮かべて見届けた男は、鬼畜以上の悪虐ということで。


1人の男として、1人の人間として。


僕は…櫂への繋ぎの為ではなく、

戦いたいと思ったんだ。


こんな環境を、櫂に引き渡せない。

このままであれば、折角櫂が蘇っても、僕の惨めな境遇を辿ってしまうことになる。


それを避ける為には、僕が変えるしかない。

侮蔑ですむだけ、まだ僕はマシだと思えるんだ。


だけど僕には、この紫堂では覆すだけの勢力はない。

カリスマ的な櫂の支持者は多いけれど、僕の支持者など…小さな小さな同情だけ。

侮蔑の眼差しには慣れてきたはずだったけれど、今となれば…それしかなかったことが悔やまれる。


名ばかりの次期当主。

成り上がりの灰かぶり姫(シンデレラ)。


6年ぶりの紫堂本家は、櫂が居ないから特に…別に対する風当たりは強い。


返り咲いたシンデレラボーイ。


僕が次期当主になれたのは実力ではなく、魔法のような奇跡が起きた為だと、それは誰もが思っているだろう。


事実そうなのだから、僕は反論する気はないけれど…そんな孤立無援な僕が、この紫堂の屋敷で、百合絵さんに再会出来たことは幸運だった。