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紫堂当主の部屋は、今まで僕達が居た紫堂本棟から少し離れた場所にある。
それは、当主に許された者以外が足を踏み込むことが許されない領域。
当主の作った強力な結界が幾重にも張り巡らされていて、防御の術なく無防備なままに飛び込めば、生きては帰れないだろう。
当主は紫堂で一番の力を持つ。
実際に力を使用したり、戦う姿は僕も見たことはないけれど、櫂が芹霞にひた隠しにしていた8年前の事実を思えば、紅皇とて当主の力を乞わねばならなかった程のもので、そして紫堂にかけられた結界を感じる限りにおいては、僕とは比べ物にならぬ程、その力は強大といえた。
櫂とて、当主不在だからこそ、以前当主の住む離れに足を踏み入れられたのだし、そう考えれば…今、確実に当主の離れに向かっていられる僕は、理由として当主が不在か、やはり久涅を連絡係に遣わしたぐらいには、当主に招かれているかのどちらか1つだといえるだろう。
当主の気配はする。
だとすれば…僕は確かに呼ばれているのだ。
僕は緊張感に、思わず心臓に手を置いた。
渡り廊下には、カコンと…鹿威し(ししおどし)の音がする。
鮮やかな緑の竹筒が跳ね上がり、白い水飛沫が宙に舞うのが目に映る。
本棟内は洋を意識しているが…紫堂自体の外観、及び当主の居る離れは、和を意識しているらしい。
風趣が統一されていないということが、筋となるべき血統がない…ただの寄せ集めにしか過ぎない紫堂という集団の象徴だと僕は思う。
近代的高層ビルに囲まれた都心に居て、これだけ立派な日本庭園が臨めるのは感嘆に価することなれど、それに"ちぐはぐ感"を感じ、滑稽にも思えるのもまた、事実のことで。
目に映る光景は静謐な趣向を凝らしているというのに、僕が向おうとする先は…どこまでも騒がしく波乱に満ちているように思えて、どうしても気が重くなる。
紫堂当主の部屋は、今まで僕達が居た紫堂本棟から少し離れた場所にある。
それは、当主に許された者以外が足を踏み込むことが許されない領域。
当主の作った強力な結界が幾重にも張り巡らされていて、防御の術なく無防備なままに飛び込めば、生きては帰れないだろう。
当主は紫堂で一番の力を持つ。
実際に力を使用したり、戦う姿は僕も見たことはないけれど、櫂が芹霞にひた隠しにしていた8年前の事実を思えば、紅皇とて当主の力を乞わねばならなかった程のもので、そして紫堂にかけられた結界を感じる限りにおいては、僕とは比べ物にならぬ程、その力は強大といえた。
櫂とて、当主不在だからこそ、以前当主の住む離れに足を踏み入れられたのだし、そう考えれば…今、確実に当主の離れに向かっていられる僕は、理由として当主が不在か、やはり久涅を連絡係に遣わしたぐらいには、当主に招かれているかのどちらか1つだといえるだろう。
当主の気配はする。
だとすれば…僕は確かに呼ばれているのだ。
僕は緊張感に、思わず心臓に手を置いた。
渡り廊下には、カコンと…鹿威し(ししおどし)の音がする。
鮮やかな緑の竹筒が跳ね上がり、白い水飛沫が宙に舞うのが目に映る。
本棟内は洋を意識しているが…紫堂自体の外観、及び当主の居る離れは、和を意識しているらしい。
風趣が統一されていないということが、筋となるべき血統がない…ただの寄せ集めにしか過ぎない紫堂という集団の象徴だと僕は思う。
近代的高層ビルに囲まれた都心に居て、これだけ立派な日本庭園が臨めるのは感嘆に価することなれど、それに"ちぐはぐ感"を感じ、滑稽にも思えるのもまた、事実のことで。
目に映る光景は静謐な趣向を凝らしているというのに、僕が向おうとする先は…どこまでも騒がしく波乱に満ちているように思えて、どうしても気が重くなる。

