「現実を見ろ、玲」
冷ややかな…切れ長の目。
櫂をどうしても彷彿させるその顔で。
僕の心に、激しい動揺が生まれて。
それでも言わずにはいられない。
「僕は…負けない」
負けてはいられない。
「後悔するぞ?」
正々堂々と、生きる為に。
ゆっくりと――
「己の力に自信があるというのなら。
行ってこい、親父殿の元に。
そして――」
弧を描く、久涅の口元。
「絶望に喘ぐがいい」
だから僕は――
「打開してやる」
笑った。
それが僕の覚悟だ。
「久涅。お前に芹霞は渡さない」
僕がそう強く言い放つと、久涅は顔から笑いを消して、ただ目だけを苛立ったように細めた。
「お前を絶対選ばせない。
そして芹霞自身もお前だけは選ぶことはないだろう。
それは…自業自得の結果だ」
僕が持てる全ての怒りを視線に託して。
久涅は暫し無言だったが、やがて僕に背を向けて言った。
「……親父殿がお待ちかねだ。
せいぜい…頑張れ?」
やがて笑い声だけになり、僕は悔しさにくっと唇を噛みしめた。
その悔しさ故に、そして久涅の特異能力故に……、僕は新たなる気配が動いたことを見逃して、久涅と袂(たもと)を分かつように、憤然と当主の元に赴いたんだ。
「…俺が抑えていられる内に」
そんな久涅の言葉すら、聞き逃して。

