僕が次期当主だからこそ、有効な話題があるとすれば…。
――巫女との間に子を成して貰う。
それしかないんだ。
つまりそれは、最初から決まり切っていたものだということ。
それは、久涅も知っていたはずだ。
その肩書きを捨てれば、表面上の僕への強制力は薄まる。
僕が紫堂と縁を切れば、僕がそれに従う義務もない。
肩書きを捨てないのは、僕の持ち得る盾としたいが為に。
そして今、芹霞を守る為には必要で。
戻って来た櫂の力とし、それまで久涅の力を削ぎたいからで。
そう、僕にとって肩書きは、簡単に捨てられるものではないんだ。
それを今更、捨てろと久涅は言う。
無言の僕から、捨てる意思がないと見た久涅は、僅かに顔を歪ませて言ったんだ。
「肩書きを捨てられないというのなら――芹霞を捨てろ」
「は!!?」
思わず僕から声が漏れる。
櫂と同じ顔で――
「芹霞を…寄越せ」
僕から芹霞を奪おうとするのか。
そんな悲痛に満ちた顔で。
愛を漂わせたような顔で。
「お前では…無理だ」
次期当主としても無理。
芹霞の"男"としても無理。
欠陥だらけの僕よりも、自分なら出来ると…そう言いたいのか、久涅!!!
「馬鹿にするな!!!」
渾身の力で放った手刀は、
「お前は…弱すぎる」
軽く弾かれた。
屈辱。
何処までも屈辱。

