ワイヤレス…こたつ。
ワイヤレスなのが時代なら、どうして情報屋の解答帽子についているボタンはコードがついていたのか訊いてみたい気もした。
しかしそんな質問、時間の駄目だ。
この情報屋の非常識さを常識で捉えたら際限がない。
「小猿、お前…何こたつに入って柿ピーと…みかんまで食ってるよ!!! お前裏切るのか!!?」
煌がこたつに入っていた翠を引き摺り出した。
「俺…力使いすぎたら腹が減るんだよ…。何でもいいから何か食いたい…。ひもじい~ひもじい~」
完全…"餓鬼"化している。
情報屋は途端ににっと笑って。
「翠はん…何が一番食べたいんや? ステーキか? ハンバーグか?」
すると。
「紫茉の…きび団子」
余程美味しいのだろうか。
それとも…七瀬自体を恋しがっているんだろうか。
「じゃあ願ってみなはれ。上手くいけば、ひーちゃんの帽子から出て来るかもしれへん」
自身が被っていた帽子を逆さまにして手に抱えた。
まるで三流手品師のようだ。
「それは"ピコン"帽子!!! いくら何でもそこから出て来るわけねえだろ、きび団子なんて」
煌が嘲笑ったが、翠は顔を真っ赤にしながら願ったらしく。
「ん~、伝わるぞ、伝わってくるぞ~」
情報屋は目を瞑りながらそう言うと、帽子の中に手を突っ込み。
「どや!!!!」
その手には…
「紫茉のきび団子!!! この歪で不味そうな色合いは…紫茉のだ!!」
そう言って…棒状に長く伸びたそれを奪い取ると、ばくばく食べ始めた。
「やっぱり紫茉のだ!! 味だけは旨い紫茉のだ!!」
「櫂…何であの中から出て来ると思う?」
「さあ…。目茶苦茶だな…」
「旨い、旨い!!! 紫茉のきび団子、やっぱ旨いッッ!!!」
「櫂…何であの中から出て来たものをがつがつ食えると思う?」
「さあ…。余程腹が減ってたんだな…」
嬉しそうに食べる翠を唖然として見ている俺と煌は、互いに顔を合わせずして…まるで独り言のようにぼそぼそと会話をしていた。
そんな俺達と目を合わせた翠は、少しばかり眉を顰(ひそ)め、動きを止めた。
そして、口をつけていない反対側を2つ千切ると、俺と煌に差し出した。
「皆で…食べよ?」
翠は、少し変わった。
与えられるものを"自分だけの権利"として独占しなくなった。
朱貴以外の人間に、気遣うことが出来るようになった。
今までの"鬼ごっこ"で…何か翠なりに感じた処があったんだろうか。
それなら嬉しいと思う。

