シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


ワイヤレス…こたつ。

ワイヤレスなのが時代なら、どうして情報屋の解答帽子についているボタンはコードがついていたのか訊いてみたい気もした。


しかしそんな質問、時間の駄目だ。

この情報屋の非常識さを常識で捉えたら際限がない。


「小猿、お前…何こたつに入って柿ピーと…みかんまで食ってるよ!!! お前裏切るのか!!?」


煌がこたつに入っていた翠を引き摺り出した。


「俺…力使いすぎたら腹が減るんだよ…。何でもいいから何か食いたい…。ひもじい~ひもじい~」


完全…"餓鬼"化している。


情報屋は途端ににっと笑って。


「翠はん…何が一番食べたいんや? ステーキか? ハンバーグか?」


すると。


「紫茉の…きび団子」


余程美味しいのだろうか。

それとも…七瀬自体を恋しがっているんだろうか。


「じゃあ願ってみなはれ。上手くいけば、ひーちゃんの帽子から出て来るかもしれへん」


自身が被っていた帽子を逆さまにして手に抱えた。

まるで三流手品師のようだ。


「それは"ピコン"帽子!!! いくら何でもそこから出て来るわけねえだろ、きび団子なんて」


煌が嘲笑ったが、翠は顔を真っ赤にしながら願ったらしく。


「ん~、伝わるぞ、伝わってくるぞ~」


情報屋は目を瞑りながらそう言うと、帽子の中に手を突っ込み。


「どや!!!!」



その手には…


「紫茉のきび団子!!! この歪で不味そうな色合いは…紫茉のだ!!」


そう言って…棒状に長く伸びたそれを奪い取ると、ばくばく食べ始めた。


「やっぱり紫茉のだ!! 味だけは旨い紫茉のだ!!」


「櫂…何であの中から出て来ると思う?」

「さあ…。目茶苦茶だな…」


「旨い、旨い!!! 紫茉のきび団子、やっぱ旨いッッ!!!」


「櫂…何であの中から出て来たものをがつがつ食えると思う?」

「さあ…。余程腹が減ってたんだな…」


嬉しそうに食べる翠を唖然として見ている俺と煌は、互いに顔を合わせずして…まるで独り言のようにぼそぼそと会話をしていた。


そんな俺達と目を合わせた翠は、少しばかり眉を顰(ひそ)め、動きを止めた。

そして、口をつけていない反対側を2つ千切ると、俺と煌に差し出した。


「皆で…食べよ?」


翠は、少し変わった。

与えられるものを"自分だけの権利"として独占しなくなった。


朱貴以外の人間に、気遣うことが出来るようになった。


今までの"鬼ごっこ"で…何か翠なりに感じた処があったんだろうか。

それなら嬉しいと思う。