「櫂。何で俺の頭触るよ。ネコ耳ついてるのは芹霞だってば」
ついていなかったけれど、目に見える気がする。
しかも喜んでぶんぶんと振る尻尾も見える気がする。
――ワンワン…。
嫌なことを思い出して、俺は頭を左右に振った。
「煌、置いていけ」
「ええ~ッッ!!! 櫂も"専用"の持って行けばいいじゃないか、どれか」
「そんな問題じゃない。それは人形だぞ? この先邪魔になる」
「人形…に見えない肌触りと盛り上が…」
コホン、俺はわざと咳払いすれば、煌はびくんと反応した。
「ねえ、ワンコ。この『ボケ女』の紙、剥がしてみていいか?」
ピリッ。
言うが早く翠が剥がした後、暫し沈黙が流れて。
奇妙に思った俺が、近付いてその芹霞の顔を覗いたら、それより僅か早く煌が叫んだ。
「うわ、何だよ、これ人形じゃないか!!!」
目の位置に、青と黒のボタンがついた…かつて芹霞が造ったイチル人形の顔。
そしてそれは、"約束の地(カナン)"においても目にしたものと同じ。
どうして、そんなものが此処に!!?
俺は…傍にある人形の紙を片っ端から剥がした。
玲も久遠も蓮も旭も司狼も…そして今は動かぬ緋狭さんまで。
…緋狭さんの場合は、少し手が震えたけれど。
どれもこれもが…歪なオッドアイの顔。
あんなに…本物のように動いて、金翅鳥(ガルーダ)まで操っていた緋狭さんもどきが、こんなに人形で…それに俺達は逃げ回っていたのかと思えば、複雑だ。
「うわっ…いらねえ。こんなの芹霞じゃねえ!!」
煌の興味は薄れてよかったが、この人形が大群で此の場にあるのは…意味あってのことなんだろうか。
それに僅かなりともひっかかりは覚えたけれど。
「時間がない、行くぞ」
今は少しでも早く先に進みたい。
俺達は、元来た道を戻った。

