「なあ紫堂櫂。ワンコって、猫が好きなのか?」
「………。いや、煌が好きなのは、猫じゃなくネコ耳と尻尾の組み合わせだ。しかも多分…芹霞限定で」
2ヶ月前。
池袋のコスプレショップから買った猫耳メイドのセットは、まだ芹霞に使われることなく、大事にタンスの引き出しにしまってあるらしい。
以前、芹霞に相談された。
――煌が…夜中、あの"セット"取出してにやにやしてるのよ。しかもさ…寝言で"芹霞のネコ耳最高"とか言ってるの。あたしの羞恥の場面を、奴変態!!?
その場に居た玲がにっこり笑って言ったんだ。
――芹霞。"あたしは妄想の猫より現実の犬が好き"って言ってご覧?
そして次の日。
――言ったらね、凄く顔真っ赤にしてね、封印して現実に生きるって。意味わかんない。
現実(リアル)に戻ったはずが、また再燃してしまったのか。
「芹霞のネコ耳だぞ、櫂!!!」
何で…そんなにネコ耳が良いんだろう。
俺は芹霞であれば何でもいいし、芹霞がそんな耳をしていてもしてなくても別に…。
………。
………。
"ニャアアン"
………。
………。
……俺は、別に…。
「これで"ニャアアン"なんて言われたら、く~ッッって来るだろ、櫂も!!」
………。
………。
"ニャアアン"
俺は……。
……人間だし。
生身の芹霞がいれば…
"ニャアアン"
………。
………。
……俺は…別に…。
「なあ、紫堂櫂。何で顔赤いの? 熱?」
俺はぶんぶんと頭を横に振る。
ネコ耳が好きなのは煌だけだ。
玲だって…。
"ふふふ、可愛いね、芹霞。僕も一緒に猫になろうかな"
………。
あいつなら、積極的に芹霞と一緒にコスプレでもして、そして確信犯的にゴロゴロと芹霞に甘えそうだ。猫だからという理由で。
まさか…そんなことしてないよな、玲!!!
ああ駄目だ。
芹霞と玲のことは今、考えるべきではない。
考えるな、考えるな!!!
「lululu~♪」
ネコ耳は男を惑わすと聞いたことがあるけれど、煌の食いつきは凄い。
同種…ではないが、やはり耳があるんだろうか、煌にも。

