「………。……この猫ちゃんの"やんちゃ"のおかげで助かったんだよね。人様に言えない、あんな凄い格好で着地失敗してたけど…げふっ」
尻尾でパシパシっと、頬に往復ビンタを食らった。
どうも…この猫、あの姿を見られたのが嫌だったらしい。
何となく…不機嫌そうだ。
猫は猫なりの…見栄というものがあることを知った17歳の冬。
猫にも人間語を解する地獄耳というものがあることも知った。
そんな世間知らずだったあたしの後頭部を、後ろ足で思い切り蹴飛ばし、その反動で白猫は颯爽と宙を飛んだ。
揺れるふさふさ。
見てる分にはうっとりするくらいの美猫なのに。
あんな姿で着地失敗するような猫には見えないのに。
白猫は…新たに運ばれたワゴンの上に飛び乗ると、皿の料理を舐め始めた。
料理だけではなく、スープからデザートから、何から何までぺろぺろだ。
「猫が食べ続けているということは…大丈夫そうですね。百合絵さんが運んだものには、毒は盛られていないようだ。毒味…してくれているのか」
桜ちゃんは白猫を冷静に観察して、そう言った。
毒味!!!
この白猫が毒味!!!?
体張ってくれているのか、この根性悪猫。
少し…見直した。
白猫は――
食べる。
囓る。
飲む。
舐める。
おいしそうなソーセージも、ベーコンも、スクランブルエッグも…出来たてのロールパンもクロワッサンも、サラダもミニトマトも。
器に入ったほかほかポタージュスープも、オレンジジュースも…水差しを倒しても舐めるように…飲み続けて。
デザートのアイスも全部食べてしまって。
凄くおいしそうなもの、跡形もなく食い散らかして。
毒じゃないのって、"ひとぺろ"で判るはずなのに…まだ食べ続けて。
毒味じゃないよ。
これ…
「それは人様の朝食だッッッ!!!
たかが猫が当然のように、3人前の人様の朝食をたいらげるではないわッッ!!!
腹減っているのは、皆同じだッッ!!!」
「ニャア」
嘲るように、白猫が鳴いた。
しかも。
「ゲフッ」
ゲップまでされた。

