シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「判りました。それは大変です。大至急、副団長を呼んできます」


百合絵さんはちょん、と…申し訳程度に頭を下げて(多分、精一杯の動きなんだろうけれど)、どすどすと帰っていった。


どすどす…。


彼女なりの大至急…なのかな?


どすどす…。


………。

あたし…ダイエットしなくちゃ。

人の振り見て我が振り直せ。


そんなことを思っている間、桜ちゃんは…白猫が目茶苦茶にさせて床に零した…スクランブルエッグの残骸を人差し指で少し掬い取り、少しだけ…舌で舐めていた。

蛆が湧いた付近だし、口にしたら汚いとおいしくないよと言いたかったけれど、少し遅かったようだ。


「………。毒、ですね。

即効性の…ヒ素系か」


普通に…世間話をしているかの口調で、桜ちゃんが言った。


そうか、ウジ味じゃなくてドク味だったのか。

よかったよかった。


………。


「毒!!!? 桜ちゃん大丈夫!!? 舐めちゃったじゃない!!!」


蛆がどうのの問題ではない。


ヒ素なんて劇物だ。

それくらいあたしだって判る!!!


「吐く!!? 水飲む!!!?」


おたおたするあたしとは対照的に、くすりと笑ったようにも思える余裕顔の桜ちゃんが答えた。


「芹霞さん、私は大丈夫です。役目柄…昔からあらゆる毒に耐性をつけていますから。この程度では私の体には作用しません」


は、はあ…。

確かに桜ちゃんに…変化の様子は見られないけれど。


桜ちゃん、小さい体なのに…頑丈なんだね…。

見るからに頑丈そうなワンコも、毒に強いのかな。


だけど奴は昔腐った牛乳飲んで、トイレから出れなかった時あったし……まあ、あまり常識が通用しない、特殊な体したワンコだけど…。


あたしだったら――


「!!!! ということは…猫ちゃんが来てくれなかったら、仮にあの蛆男と戦闘にならなくても、事後でも!!! 蛆男が運んだ料理を口にしていたら…」


「ええ。間違いなく…"イチコロ"です」


ざわ。

ざわわ…。


寒い…首筋が…。


と思ったら――


「何!!!? 重っ…」


白猫が、襟巻きのようにあたしの首筋に巻き付いてきた。


「今度は何だ!!? あたしは置物ではない!! そんなポンポンポン簡単に人の上に乗ってくるな!! あたしはか弱い女の子じゃッッ!!!」


だけど――

このふさふさのぬくぬく猫のおかげで…ぽかぽかになってきた。


この気まぐれ性悪猫のおかげで、何だかぽかぽか。