「芹霞さん。この人は大丈夫、信用できます。頼んだことが終わったから、専属で食事を用意してくれたんですよ。そう…先に話していたんです、私」
桜ちゃんも信用できる人…。
「百合絵さん、アレは…」
「はい、取り付け完了し、今帰って参りまして、大至急お食事を用意しました。電気? 停電だったんですか? 厨房は問題ありませんでしたが…復旧したんでしょうか」
停電は…この部屋だけなんだろうか。
由香ちゃんが再び手にしたパソコンは、動く気配を見せない。
とりあえず…味方なんだ。
何だかとてもマイペース過ぎる人のような気はするけれど。
玲くんは見掛けで判断する人じゃないのは判っているけれど…だけど優しい玲くんとはあまりに対照的な雰囲気だ。
百合絵さんはあたしをじろじろ見て。
本当に不躾な程、じろじろ見て。
「玲ぼっちゃまをよろしくお願いします」
そう…首に埋もれた頭を前に傾けた。
「玲ぼっちゃまが選んだ大切な方は、私の大切な方でもあります。ぼっちゃまをどうか…ずごっ」
最後のおかしな効果音は…多分、鼻を啜る音だ。
「どうか…ずごっずごっ」
無表情のままで怖いくらいなのに、実は涙もろく…優しかった百合絵さん。
見た目と言葉がまるで不一致な百合絵さん。
この紫堂の中…玲くんを大切に思ってくれている人がいるだけでも安心したよ。
「お食事、支度をさせて頂きます」
そう百合絵さんが足を前に進ませた時、百合絵さんが何かを踏んづけた。
先程、猫がぐちゃぐちゃにした皿の破片だ。
そこで初めて、百合絵さんは事態に気づいたらしい。
「………。この残骸は…」
普通、まず先に…視界に飛び込むこの異常性に気づきそうなモノだが…周囲を眺めている様子から察するに、太すぎる首の肉や重そうな瞼や顔の肉が邪魔をして、彼女が見れる範囲が目線の高さのみに固定されているらしい。
散らばっている"異常"は、下方だから…視界の範囲外だったのだろう。
「紫堂ではない者が紛れています。私は此処から離れたくないので、すみませんが…副団長に警護を直接指示したいので、呼んできていただけますか? 食事の支度は私がします」
桜ちゃんが口早にそう言うと、百合絵さん、肉に埋もれた目をぎょろっと動かした。
動揺…でもしたのか。

