シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「芹霞さん。この人は大丈夫、信用できます。頼んだことが終わったから、専属で食事を用意してくれたんですよ。そう…先に話していたんです、私」


桜ちゃんも信用できる人…。


「百合絵さん、アレは…」

「はい、取り付け完了し、今帰って参りまして、大至急お食事を用意しました。電気? 停電だったんですか? 厨房は問題ありませんでしたが…復旧したんでしょうか」


停電は…この部屋だけなんだろうか。

由香ちゃんが再び手にしたパソコンは、動く気配を見せない。


とりあえず…味方なんだ。

何だかとてもマイペース過ぎる人のような気はするけれど。


玲くんは見掛けで判断する人じゃないのは判っているけれど…だけど優しい玲くんとはあまりに対照的な雰囲気だ。


百合絵さんはあたしをじろじろ見て。

本当に不躾な程、じろじろ見て。


「玲ぼっちゃまをよろしくお願いします」


そう…首に埋もれた頭を前に傾けた。


「玲ぼっちゃまが選んだ大切な方は、私の大切な方でもあります。ぼっちゃまをどうか…ずごっ」


最後のおかしな効果音は…多分、鼻を啜る音だ。


「どうか…ずごっずごっ」


無表情のままで怖いくらいなのに、実は涙もろく…優しかった百合絵さん。

見た目と言葉がまるで不一致な百合絵さん。


この紫堂の中…玲くんを大切に思ってくれている人がいるだけでも安心したよ。


「お食事、支度をさせて頂きます」


そう百合絵さんが足を前に進ませた時、百合絵さんが何かを踏んづけた。

先程、猫がぐちゃぐちゃにした皿の破片だ。


そこで初めて、百合絵さんは事態に気づいたらしい。



「………。この残骸は…」


普通、まず先に…視界に飛び込むこの異常性に気づきそうなモノだが…周囲を眺めている様子から察するに、太すぎる首の肉や重そうな瞼や顔の肉が邪魔をして、彼女が見れる範囲が目線の高さのみに固定されているらしい。


散らばっている"異常"は、下方だから…視界の範囲外だったのだろう。


「紫堂ではない者が紛れています。私は此処から離れたくないので、すみませんが…副団長に警護を直接指示したいので、呼んできていただけますか? 食事の支度は私がします」


桜ちゃんが口早にそう言うと、百合絵さん、肉に埋もれた目をぎょろっと動かした。


動揺…でもしたのか。