この…可愛げも強調性もない、マイペース猫。
どすどす…。
美人サンの姿態なのに、性格がいただけない。
どすどす…。
ただの生意気猫に、決定!!!
どすどす…。
ん? 何だ、先刻から聞こえる、この"どすどす"は。
重量感あるその音に首を捻った時、
「おはようございます。
朝食を…お持ちしました。
大変お待たせ致しました」
開け放たれたままのドアから、突如割り込んだ声。
また…女給仕の服を着た者が、ワゴンに食事を乗せてやってきた。
出来立てパンの匂い。
だけどそんなものに惑わされるものか。
「………」
女声というよりは…ドスの利いた嗄れた声。
女体というよりは…ふくよかさだけを強調させる三段腹。
はちきれそうなメイド服。
どすどすは…この人の足音だったらしい。
何てこの人に相応しい足音だ。
インパクトのある、分厚いお顔。
ティアラ姫の方が余程女っぽい。
これは…見るからに女じゃないね。
明らかに先程の、蛆男の方が"女"だったね。
素人のあたしでも判るよ。
「桜ちゃん、また敵だね?」
顔を強張らせ、知った顔で囁けば、
「いえ、これは正真正銘…紫堂に古くから仕える女性です」
そうらしい。
一蹴だ。
「玲様に直接お持ちするように言われました。藤百合絵と申します。よろしくお願い致します」
つくづく…あたしには見る目がないらしい。
見ても…そんな清楚な名前を思い浮かべることも出来ない。
あたしのイメージでは、"豪徳寺権三"とかそこらへんの名前がぴったりだ。
「昔…玲様の専任のメイド…でした、百合絵さんは」
なんとも複雑そうな顔で、桜ちゃんは言った。
過去形ということは、今は御役ご免状態なんだろうか。
玲くんの専任メイドさん…。
綺麗な綺麗な玲くんのメイドさん…。
…………。
仲睦まじい姿を…まるで想像できないや。
玲くんが百合絵さんに頼むということは、玲くんは信頼しているんだろう。
信頼…。
そういえば、玲くんが"彼女"と呼んでいた人がいたような。
後で紹介してくれるはずの、恋人じゃない"彼女"。
もしかしてこの人?

