シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



この…可愛げも強調性もない、マイペース猫。


どすどす…。


美人サンの姿態なのに、性格がいただけない。


どすどす…。


ただの生意気猫に、決定!!!


どすどす…。


ん? 何だ、先刻から聞こえる、この"どすどす"は。


重量感あるその音に首を捻った時、


「おはようございます。

朝食を…お持ちしました。

大変お待たせ致しました」


開け放たれたままのドアから、突如割り込んだ声。


また…女給仕の服を着た者が、ワゴンに食事を乗せてやってきた。


出来立てパンの匂い。

だけどそんなものに惑わされるものか。


「………」


女声というよりは…ドスの利いた嗄れた声。

女体というよりは…ふくよかさだけを強調させる三段腹。

はちきれそうなメイド服。


どすどすは…この人の足音だったらしい。


何てこの人に相応しい足音だ。


インパクトのある、分厚いお顔。

ティアラ姫の方が余程女っぽい。


これは…見るからに女じゃないね。

明らかに先程の、蛆男の方が"女"だったね。


素人のあたしでも判るよ。


「桜ちゃん、また敵だね?」


顔を強張らせ、知った顔で囁けば、


「いえ、これは正真正銘…紫堂に古くから仕える女性です」


そうらしい。

一蹴だ。



「玲様に直接お持ちするように言われました。藤百合絵と申します。よろしくお願い致します」


つくづく…あたしには見る目がないらしい。

見ても…そんな清楚な名前を思い浮かべることも出来ない。

あたしのイメージでは、"豪徳寺権三"とかそこらへんの名前がぴったりだ。




「昔…玲様の専任のメイド…でした、百合絵さんは」


なんとも複雑そうな顔で、桜ちゃんは言った。


過去形ということは、今は御役ご免状態なんだろうか。


玲くんの専任メイドさん…。

綺麗な綺麗な玲くんのメイドさん…。


…………。


仲睦まじい姿を…まるで想像できないや。

玲くんが百合絵さんに頼むということは、玲くんは信頼しているんだろう。


信頼…。


そういえば、玲くんが"彼女"と呼んでいた人がいたような。

後で紹介してくれるはずの、恋人じゃない"彼女"。


もしかしてこの人?