発情期の時のように甘えるような声でいて、だけどとてつもなく鋭い…正反対の性質を秘めたその声音が、空気をびりびり震わせたんだ。
何だ、この猫!!!?
すると――…
「発火!!!?」
蛆が…いきなり燃えだしたんだ。
赤く…炎に包まれて。
猫が炎!!!?
驚いて皆で猫を見たけれど、猫は少し離れた処に座り込んで、派手な欠伸をしていた。
だから何、この猫!!!?
何だか判らぬまま…蛆は燃え尽きてしまい、そして炎も消えた。
風景から、悍(おぞま)しい赤色と白色が消え、見慣れた無彩色の色合いが回復する。
男の姿など勿論なく、最初から何もなかったかのように…男の存在だけが忽然と消えたんだ。
一体何が起こったのかよく判らない。
この猫がなんかしたの!!?
白猫は…ペロペロと自分の手を舐めている。
そんなに凄い猫には思えない。
猫は所詮猫で。
白いふさふさの…ただの猫にしか見えないのに。
猫の鳴き声に救われたのか。
炎に救われたのか。
猫が炎を誘発したのか、関係ないのか。
何もかにもがよく判らない。
「猫だよね?」
「猫だよな」
「猫ですよね…」
やはり…あたし達の中では、猫以外の凄いものには見えない。
猫がしているのは、猫特有の仕草ばかりだし。
ただの猫か、凄い猫か。
じっくり検分してやろうと、近くに呼び寄せようとしたけれど、白猫は何処吹く風で。
おいでおいでしても来る気配もないし、ぱたぱたと軽く手で床を叩いてみても見向きもせず。
「ネコターン」とちょっと甘えて呼んでも、耳の後ろを足でぽりぽりするのに夢中でてんで反応なし。
四つん這いになり、ニャーニャーと…猫の声真似までして呼んでみれば、少し反応あって…ちらりとこちらを向いてくれたけれど。
"お前馬鹿?"とでも言いたげな冷たい顔をくれた後、どうでもよさそうな顔で大欠伸をされ、その後体を丸めて寝てしまった。

