芹霞さん…。

本当に玲様が好きなんですか?


それは本当に愛なんですか?

櫂様以上に、玲様が好きなんですか?


何故だか――

無性に…荒く彼女に尋ねたくなって。


ソレハダレノタメニ?


私は――

唇を噛みしめ、ちくちく痛む心抑えつけた。


何故か、煌の…泣きそうな顔が思い浮かんだ。


諦めなくてはと言いつつ、

諦めきれないあの顔を。


また…ちくりと胸が痛んだ。


「…桜ちゃん、大丈夫?」


気づけば、芹霞さんが心配げな顔を向けていて。


「凄く辛そうな顔しているけれど…何処か痛いの?」


もしも――

もし――…。


貴方のことを想って、胸が痛くて仕方が無いと言ったら。

芹霞さんは…どう反応するだろうか。


私も1人の男です。

私も見て下さいと言ったのなら。


芹霞さんは、私を意識してくれるだろうか。


感情のない私が、芹霞さんに感情を求めたのなら。

もしも涙を見せて懇願したとしたら。


それでも。


それでもやはり私は…

"桜ちゃん"にしか過ぎないのだろうか。


ありえないけれど。

だけどもしも芹霞さんが、私を意識してくれたのなら。


櫂様や玲様や煌でもなく。

初恋の久遠でもなく。


私を男として見てくれたのなら。


そしたら私は――



「大丈夫です」



私は頭を下げて言った。


やめよう。


ありえないことを考えていても虚しいだけ。


私はそんなことは考えてはいけない。

許されているのは、見守ることのみ。


私は…遠坂由香が、八の字眉で見ていたことに気づかなかった。


◇◇◇

呟きのエリアが変わりました。


《Upper World 001》