「今度はあたしの方に来たよ~。どうしよう、何か人事の気分じゃなくなってきちゃった!!! 早くどうにかしたくて焦ってきちゃった!!」
「これぞ氷皇の心理作戦か!!!? な、何でボクに渡すんだい、神崎!! これは君に来たメールだろ!!? 返す」
「あ、あたしいらない。由香ちゃんにあげる」
「ボクだっていらないよ!!! だから何でボクにポイって…」
「いや~。由香ちゃん、あたしにポイしないで~」
「いやいやこれは神崎のだし」
単純思考の…女性2人。
まるで時限爆弾を手にしたように、鳴り続けるiPhoneを互いの手に放り続けて、責任回避を目論んでいる。
『ラーブ、ラブリー、ひいちゃん!!』
『ラーブ、ラブリー、ひいちゃん!!』
「うわうわ、今度はボクにも鳴り響いて…うわっ葉山の方も!!?」
「メールを全員一括送信したんだよ、蒼生ちゃん!!! 煩いよ~。玲くんの合わせたら4重奏で煩すぎるよ~。もうこれストーカーレベルだよ、絶対迷惑メールだって~!!!」
本当に煩い。
煩い声色が3倍(プラス1倍)だ。
「あああ、この騒音に耐えられない!!! もう…押すぞッッ!!?」
遠坂由香が悲痛な声を上げながら、自分の画面を押すけれど…声は止まらず。
芹霞さんのも私のも…ボタンを押すことすら出来ない。
グレー色になって、押す操作が無効化されている。
「何でだよ~ッッッ!!」
「とりあえず玲くんのもやってみよう!!」
芹霞さんは遠坂由香がぐるぐる巻きにした玲様用のiPhoneの拘束を解き、慌てて画面に大きく表示されている「OK」ボタンを押した。
すると――
「何で…全部の音が止むんだろう…」
一斉に情報屋の声は収まった。
「ボク達のこれ…師匠のiPhoneの子機みたいなものかもな」
遠坂由香は溜息をついて。
「師匠のiPhoneに来たものを取らないと、ボク達のiPhoneはスピーカーみたいに拡声されるんじゃ…」
「えええ!!? 何それ…!!! じゃあこのiPhone捨てちゃおうか!!」
「そうだな。とりあえずその前に…メールだけでも開くか。煩いからな。師匠もいないし、どうか…普通に腐ってるメールでありますように!!!」
胸の前で十字を切って、遠坂由香は開かれたメールを覗き込んだ。

