櫂様…。
一介の警護団長如きが、主たる櫂様と過ごしてきた思い出は強すぎて。
私だって見てきた。
櫂様が、どんなに芹霞さんを一途に愛されてきたか。
そして玲様もまた。
知ったのは本当に突然のことで、それまで…玲様の心を私は気づくことも出来ないくらい、玲様は見事に心を隠してこられてきたけれど。
大切な櫂様の気持ちを一番知る玲様でさえ、どうしようもなかった程…芹霞さんを愛されているのも判るんだ。
そしてあの馬鹿蜜柑も。
不器用で直球で…盛ってばかりだけれど。
その煌が、唯一"忍ぶ"という…大の苦手なことを自分に強いてまで、それでも芹霞さんを求め続けていることも、私は判っている。
ああ…皆の心が痛くて。
私は、心から玲様を賞賛できなくて。
切ない。
切なすぎる。
心が共鳴して…きりきりと痛んでくる。
私が物思いに耽っている間、遠坂由香は、いまだ鳴り続けるiPhoneをぐるぐると上着で包んで、音を消してしまっていた。
「どうして音量も変えられないのかな、このスカポンタンの最新機器は。これじゃあいい様にされるがままじゃないか。今は師匠もいないし…頑張って皆で凌ぐぞ!!!」
私達は力強く頷きあう。
「メール開けないと…また投稿されちゃうのかなあ。二宮さん待機しているんだったよね、確か…」
「二宮さん…氷皇の腹心なのかな。榊兄みたいな…。けど…榊兄から、氷皇からマッサージして貰ったなんて聞いたことないや」
「まさか、蒼生ちゃんの恋人なんじゃ…」
「氷皇の恋人なんて、普通人に務められるものか!!! 遊ばれるまでにも至らず、使い捨てだよ、きっと。どこかの発情ワンコみたいにさ」
途端――
芹霞さんの顔つきが険しくなった。
「今度説教してやる!!!」
どちらに…説教をするつもりなのだろうか。
『ラーブ、ラブリー、ひいちゃん!!』
「ひっっ!!!」
芹霞さんが飛び上がる。
音を遮断したはずなのに、また聞こえてきた理由は…。

