"来たる刻"
そして王子様とやらが必要な上岐妙。
その肉体と精神は、何処までが上岐妙で何処までが黄幡一縷なのか。
きちんと整理してみないといけない。
しかしその前に――
「上岐物産本社は木場の近くだね? ああ、台場の黒い塔が最寄りの塔か? ただ…あれは桜が壊したんだろう?」
「はい」
「だったら…同時破壊…の対象にはならないな。由香ちゃん。久涅が黒皇で、黒い塔による東京と"約束の地(カナン)"の魔方陣同時破壊があるとして…櫂はそのことについて疑問は無いようだった?」
僕にはあるんだ。
「あるみたいだったよ。久涅と当主が"約束の地(カナン)"に来た理由。同時破壊の前に、"約束の地(カナン)"の魔方陣を壊そうとした理由。それによって、同時破壊という黒い塔の意味自体に懐疑的になってたみたいだ。
また身内から五皇が出たこともおかしいって。その為にも、裏世界で久涅の痕跡を追ってみるって」
やはり櫂もひっかかったか。
何故あの時、"約束の地(カナン)"を爆破しないといけなかったのか。
何故あの2人がわざわざ"約束の地(カナン)"に来たのか。
僕はそれがずっとひっかかり、その謎が解けない。
「玲くん。身内…紫堂から五皇が出るのって、おかしいの?」
「うん。紫堂の格付けは五皇の遙か下だからね。元々元老院は異能力者の烏合の衆である紫堂を抑える為に、監視役として紅皇をつけたくらいだ。そんな紫堂に権力を持たすことがありえないと思う」
「うへ? 紅皇サン…監視なの? でも教育係して、皆を助けてくれていたんでしょ?」
「監視という仕事を建前にして、僕達を助けてくれていたのは…ひとえに紅皇の"慈悲"故に。………」
「どうしたんだい、師匠」
「ん……。何だか今考えると、格下紫堂如きに、五皇の最強の紅皇が何故つく必要があったのかなってさ。皇城のような大組織でもなく、各務のように誇れる歴史も力もないのに。元老院のお情けで財閥にして貰った家だ。次期当主を見張る程、そこまで紫堂というものが畏怖すべき存在かなって」

