今、櫂の地盤は何もねえ。
肩書きも、紫堂のサラブレッドたる血統の信頼性も…愛情も。
だけど櫂が櫂で生き続ける限り。
俺は…死ぬまで櫂の幼馴染で、櫂を主として慕い続ける。
何処までも櫂と行く。
きっとそれは…俺だけではねえはずだ。
桜も玲も…。
櫂は…1人じゃねえ。
俺達が居る。
必ず、櫂を笑顔にさせてみせる。
「煌」
櫂は俺に言った。
僅かに揺れる…憂いの含んだ漆黒の瞳で。
「――今の俺には何もない。
地位も名誉も…何1つ。
俺は…表舞台から消えた人間だ。
俺にあるのはただ…
今の俺が紫堂櫂と信じ続けている…
この肉体と頭だけだ。
それでも…もし、お前さえよければだが…
無理強いはしないが…」
俺は、櫂の首に腕を巻きつけ笑った。
「何気弱なこと言ってんだ、お前?
俺はお前がお前であればそれでいいんだよ。
お前が生きていればそれでいい。
お前は俺の飼い主様だろ?
何処へとも俺は着いていくぜ?
お前が"裏世界"に行くというのなら、俺も入ってやる。
拒んでも何しても、追いかけ回してやる」
「ありがとう…煌」
そう、声を震わせて言うから。
「お前泣き虫になったな、櫂」
「お前だって似たようなもんだろ、煌」
ああ、何かいいな。
櫂とこういう空気が持てるのはいいな。
幼馴染でよかったなって…本当に思う。
櫂が辛くて哀しい時、俺は櫂についていてやれるから。
櫂が嬉しい時、俺は櫂と共に喜んでやれるから。
櫂は1人じゃねえよ。
1人になんか誰がさせるかよ。

