シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

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じゃらじゃらじゃら…。

歩く度に鎖が音をたてる。



「ワンコ、うっさい」

「…小猿、黙れ」


じゃらじゃらじゃら…。


俺は苦笑して、先刻まで鎖を両手に抱えて歩いていた煌を見た。


赤と黒の鎖の量は半端無く、更には…抱えて持つと相当の重さになるらしい。煌曰く…巨大な偃月刀並みだとか。

切りたった崖の道、おぼつかない足場の中、平衡感覚をとりながら歩く分、偃月刀を振り回す時よりも数倍疲労度が強く、腕は痺れて感覚がなくなってまうらしい。

怪力自慢の煌ですら、辟易させてしまう鎖の重み。

そこで腕の休憩兼ね、煌が鎖を手から離して歩き出した途端に、じゃらじゃらという騒音が始まる。


赤黒それぞれの鎖は、長さにして5m程度。

この素材は"輝くトラペソヘドロン"とは違う、黒と赤の単色2つ。

鎖を構成する1つ1つの輪が、頑丈で重厚だ。

それ以外の…俺達と同様の枷は、ある程度のずっしりとした重さはあるものの、特別に負担になる重さでもなく。

最初は重いと叫んでいた翠も、次第に身体を慣らしていったようで、煌だけが…目にも耳にもはっきりと判る"重さ"を与えられていたんだ。


それは煌のストレスになっているらしく、


「なんで草原の先が、こんな崖よ!!? 説明しろよ、"hisiri"!!!」


問いかける声が荒くなっている。


『お答えします。却下です』


煌がiPhoneに怒鳴れば、冷静というよりは"つん"としたような女声。

その答え方が、煌の怒りを煽ったようで。


「お前、何高飛車よ!!!? "hisiri"!!!」


ぎゃんぎゃん煌は吼える。


『お答えします。私の名前はヒシリであり、ヒジリではありません。あのチャラい男と一緒にしないで下さい。胸悪い』


先刻から…こうなんだ。

音声ガイドの、このhisiriは…。


反応は人間並で、まるで人工知能のようにこちらの言葉を解して、それに応じた言葉は返ってくるものの…中々手強い。


「お前、機械のくせに…何でチャラいって判るんだよ!!? お前何処に目があるんだよ、どこに悪くなる"胸"あるんだよ!!!」


所詮は機械と諦めればいいものを…煌は…全力でhisiriの相手をしている。


『お答えします。私はイヌ語は得意ではないので、英語で話して下さい』


「~~~ッッッ!!!」


しかし…hisiriのあしらいの方が…煌より上手らしい。


まさしく、"けんもほろろ"。