――あたしは、玲くんが好きです。
あたしは…煌じゃない手を選んだのか。
そして煌は…あたしじゃない手を選んだのか。
何だろう、このぽっかり感。
玲くんという、あたしには過ぎた初彼氏サンを獲得して、何でこんなに喪失感を覚えるのか。
既視感。
昔も何処かでこんなことがあった気がする。
煌の手を振り払い、玲くんを選んだ気が。
………。
初めての"約束の地(カナン)"だ。
"拒絶"
そんな行為を、8年来の幼馴染に向けた。
そして煌は…
――うわああああああ!!!
………。
何で…ああなった?
あの時あたしは、玲くんとお試しをしていたはずで。
お試しなのに、どうして煌を傷つけた?
あたしはあの時、煌を傷つけても玲くんが好きだった?
憂いの含んだ切れ長の目。
翳りある端正な顔。
朧に浮かぶ紫堂櫂の顔。
どうしてこの時に思い浮かぶのか。
あたしが、あの時したかったのは――
「……芹霞?」
その声に顔を上げれば、
「ひっ!!!?」
玲くんの顔のドアップ。
「玲くん…心臓に悪いから。どうしてそんな至近距離で…」
心臓が口から飛び出てきそう。
美人顔のドアップは、迫力があるんだ。
「何度も何度も呼んだのに、反応がないから…」
玲くんはそう困ったように笑って、すっと…笑みを消した。
「ねえ…今。
何を思っていたの?」

