「……芹霞、どうした? 心臓…苦しい?」
気づけば、皆の目があたしにあった。
どうやらあたしは、知らぬ間に心臓付近の服をぎゅっと握りしめていたらしかった。
心配げな鳶色の瞳。
「ううん? 心臓は大丈夫だよ。心臓は……。………。あれ? あたし、何で入院して心臓の手術したんだっけ?」
玲くんが担当医となって、池袋の病院で入院していたことは記憶ある。
だけど健康優良児だったあたしが、何で心臓手術?
「あれ? 別に玲くんみたいに発作起こした記憶ないんだけれど…。あれ?」
首を傾げるあたしの前で、皆が曇った顔を見合わせていた。
「ねえ…芹霞。2ヶ月前に東京で起きたことって、ちゃんと覚えてる?」
堅い表情で玲くんが訊いてくる。
「2ヶ月前って…あたしボケてないよ。藤姫でしょう? ああ、もしかして…大量ゾンビが関係あるの?」
食われそうになったとか?
襲われて心臓発作起こしたとか?
考えるだけでスプラッター。
しかし皆は肯定も否定もしない。
「多分…"あいつ"に関係あるからだね」
「………同時に、大切な人が"死ぬ"のを…弾いているのでしょう」
由香ちゃんと桜ちゃんが何かをぼそっと呟き、玲くんは悲壮感漂う顔を向けたまま。
あたしは場の空気を悪くしたことに気づいて、
「ああ、別にいいの、いいの!!! ごめんね、再会したばかりなのに変なこと聞いちゃって。
ええと…とにかく由香ちゃんと会えて良かった!!!」
無理矢理笑いを作って、明るく振る舞った。
「だけどあの情報屋サンがいてくれてよかったね!!! じゃなかったら由香ちゃんも紫堂本家まで来れなかっただろうし」
「ああ…まあ、多分は…情報屋以上の根回しがあったんだと思うよ? じゃないと、あんな変な場所で会うわけないもの」
「え? 会うって…?」
「………氷皇」
ぼそっと、由香ちゃんは言った。

