俺は耐えきれず叫ぶ。
「護法童子、駄目だ!! お前が消えては翠が……!!」
「翠殿はお強い。それにこの方法こそが、吉祥様の心を取り戻す唯一の方法。必ず、翠殿のもとに、帰ってきてくれるはず」
「駄目だ、剣鎧!! お前は翠の友であると同時に、俺の友でもあるんだ!! 俺は友達を失いたくない!!」
「はははは、櫂殿。有り難くも名前で呼んで下さるか。…翠殿は本当にいい方に導かれた。翠殿の手前、口にはだせなんだが……最後だから大目に見て下され、翠殿。
櫂殿、我は出会えてよかった。櫂殿の気概、我は感嘆しておった。己の信じる道を突き進められよ。皆は必ず櫂殿についてきましょうや。
そんな貴殿だからこそ…安心して翠殿を託せる」
「馬鹿野郎、小小々猿!! なに薄くなってんだよ!!? 消えるな、消えるなって…!!」
「ワンコ殿…。ワンコ殿は温かい。翠殿に、我に…居心地よい場所を作って頂き、感謝申す。ワンコ殿…我は楽しかったですぞ? どうか櫂殿と共に、翠殿を…翠殿を……」
そして護法童子の気配は――
「小小々猿、おい!!」
消えたんだ。
跡形もなく。
「チビが……息を吹き返した」
レイの命となって。
「うわああああああああ!!」
泣き声を出したのは翠だった。
そんな翠を笑ったのは、吉祥。
護法童子の力をなくした吉祥は、俺達の力を猛然と押し返してくる。
俺の頬に、汗が伝い落ちる。
手の毛細血管が切れ、真紅色の滴が弾け飛んだ。
このままではやばい。
翠が吉祥を従えないのなら、せめて俺達の力で――。
俺が煌に、増幅の力に切り換えて欲しいと口にしようとした時、
「ゴボウちゃんの……剣鎧の心が判らないか!!」
途端、爆発するように……深緑色の光が迸り、吉祥に向かい縛り上げた。
失った金色の力に代って。
「……お前を従えてやる!!
――周涅!!!」
その目は、吉祥の奥のものを見据えているのだろう。
「ほほほほ。我に指図するのかえ? この……出来損ない」
最後のその声は、周涅の声となる。
吉祥の影が、姿を現わした瞬間だった。
「口だけ達者の、似非術師。自ら作り出した式神ひとつ救えずして、式神に仲間の命助けられるのを、ただ見ているだけだったくせに。それで従わせる? この俺を? 自惚れるな、蛆虫。これはあの護法童子も、目が腐っていたわ!!」
周涅の蔑んだ声に、翠の怒声と共にその力が更に爆発する。
そして――翠は浮いた。
もともとの宙に浮く力は、テトリスのゲームで強まったものの、それ以上の力の飛躍。
そして消え――瞬時に吉祥天の前にいた。
瞬間移動の力も、強まったというのか。

