そう、失ったものは、すぐには蘇らないだろう。
回復手段をどうすればいいか、俺は明確な解答が出せないでいたんだ。
レイを俺の回復結界に入れたとしても、俺は玲のような強い治癒力はない。
レイが奥義を発動させるまでの体力回復は、僅かな間では望めない気がしていた。
それに、変調をきたしているのはレイだけではない。
急速に、より多くの数の回復を施すためは、吉祥の特異術を利用できないかと思ったんだ。
そのためには――
吉祥から、吉祥が受容した周涅の影を追い出さないといけない。
現状では絶望的だ。
しかし、吉祥さえこちら側に戻れば――。
「櫂、どうやってよ!!」
「周涅を越えた翠の力を……吉祥に認めさせる!!」
「はあああああ!?」
吉祥の中で、翠と周涅の立場が均衡であるならば。
吉祥自身で選ばせる。
翠の式神でいたいということを。
外部の力に流されるのではなく、吉祥自身の心で。
「裏切り者を許すってのか!?」
「許すかどうかは…翠の役目だ!! 翠!! 吉祥を従えろ!!」
「こ…こんな状態で…できるわけないじゃないか!! 吉祥ちゃんは怒っ……て、全然言うことを聞いて……くれないよ!!」
涙声の翠は、声を張り上げるのもかなりしんどそうに思えた。
このままだと、時間の問題。
式神を従えられるのは、今しかない。
吉祥に不信感を抱かせているのは俺達。
だからといって、俺達は力の放出をとめられなかった。
瘴気に変わりゆく吉祥の気配を感じているから。
今の俺達の力は、吉祥の檻なんだ。
それを解けば、たちまち吉祥は周涅の式神となり、俺達を襲うだろう。
周涅の思惑が、俺達の攪乱に留まらず、裏世界諸共俺達の消滅であるのなら、どんな凶悪な獰猛さを見せつけてくるかわからない。
その瀬戸際である今、吉祥を従えさせようというのなら、最低限力の檻は必要だった。
「俺の言う事なんて、聞いてくれないよ!!」
思念で結ばれたのが式神というのなら、術者との絆は必須条件になる。
より強く、絆を強めさせるにはどうすればいい?
吉祥の中での、どっちつかずの曖昧な絆を強固に出来るのは?

