俺達が石碑を廻る時、スクリーンは俺達の動きを止めようと攻撃していながらも、それまでの忍者達を相手していたように殺意めいた攻撃はなかった。
まあ、攻撃の前に俺達が素早く走り抜けたということもあるけれど。
むしろ、石碑に担当がついて動きを止めてその場に留まった時点で、スクリーンは動き始めた。
担当者は俺達が背を向けた直後、大きな力で抵抗していたのを俺は知っている。
スクリーンが、皆の視覚を騙すために用意されたものだと仮定して。
それらが映し出すものに騙されているのは誰だ?
石碑担当者か?
俺達か?
「チビ、お前目を瞑って奥義を発動し、今度は目ではなく気配で途切れた部分を追え」
「え?」
「スクリーンに、周涅の力が映写機のようになって、別の映像を投影させられている、多分」
まずは奥義を発動することで九星の陣を破る可能性があるキーパーソン……キーリスの目が騙されている可能性が高い。
櫂達の現状は、スクリーンに覆われていない可能性がある。
考えて見ろ、櫂なら――奥義が発動してねえとわかった時点で、俺達となんとか連絡をとろうとするはずなんだ。
あいつなら、スクリーンの猛攻に黙ってやられているだけの奴じゃねえ。
あいつなら、どんなことをしても俺達を信じて石碑を護るはずなんだ。
同時に俺達になにかあったはずだと、動くはずなんだ。
櫂だけではねえ。
皆、俺達に希望をかけ、苦しんでもがいていても、絶対やられるわけねえ。
チビが見たように、スクリーンに閉じ込められたままおとなしくしているはずはねえんだ。
「だけど、返事がなかったじゃないか!」
チビリスが目を潤ませた。
「追加の可能性として、俺達の方がスクリーンに閉じ込められている。だから、スクリーンが襲ってこない」
「ええええ!? 僕、凄く凄く"高い高い"したじゃないか!」
……このチビ、やっぱ"高い高い"と思って喜んでいたのか。
「どこまでが偽の映写かはわからねえ。けど……チビ、俺の耳を信じろ」
「僕の目ではなく?」
チビが真剣な目を俺に向けてきた。
「ああ。お前自身ではなく、俺を信じてくれ」
このチビのプライドは高い。
今、俺はこいつの価値観を崩そうとしている。
「必ず、お前の心と俺の耳は……同じ答えを出すはずだから」
櫂のように理路整然と説明出来ねえ俺は、ただ直感のような本能に頼った言葉しか吐けねえけれど。
「頼む」
「わかった」
チビはにこっと笑った。
「僕は、お前を信じるよ」
ああ、ここに玲がいる。
かつて玲も俺にそう言った。
俺はそんな玲を助け出すことは出来ずに、緋狭姉を選んであいつや櫂がいる"約束の地(カナン)"に逃げたんだ。
もう二度と、玲を失望させるものか。
俺は、俺自身の決断を信じる。
「さんきゅ」
俺も笑った。

