シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



バリバリバリ。


究極奥義の発動には、名前など関係ねえらしい。

今度はふたつに分けられた雷が、音をたてて地を走る。


「へぇ、もしかして二方向から中央に向けて鉄の胡桃を走らせているのか?」


リスはリスなりの矜持があるのかもしれねえ。

威力が中間地点で消滅してしまうのなら、二方向から雷を走らせることでひとつに繋げようとしているんだ。

「進化したのは威力だけじゃねえってことか。さすがはセコンド」


カーンと、頭の中で鐘が鳴る。


しかし、そんな究極奥義セコンドも、途中で消えたようだった。

想定内とはいえ、無性に腹立ってくる。


静まり返った中で、チビを待つこと数秒。


――チビが落ちてこなかった。


「まさか、煤になっちまったか?」


流石に俺は焦った。

声がしたということは、奥義発動時にはこの世界にはいたということで、煤になってねえとしたら、裏世界を突き抜けて、大気圏突入の如く、違う世界に行ってしまったのか。

裏世界に隣接する別世界があればの話。


「マジに落ちてこねえ……」

俺は天を遙か遠く見据えながら、大声を放った。


「チビ、チビ!! 生きてるなら返事しろ!! チビ!!?」

その時。

「ふぁ~い」

何とも気抜けするような声がして、ヘンテコなものがふわふわ舞い降りてきた。

そう、"舞い降りて"きたんだ。


「は!?」


それは――。


かつての莫大な貯蔵量を誇った頬袋と腹袋を、パラシュートのように大きく膨らませながら、スーパーマンの如く勇ましい大の字姿で、ゆっくりと降りてくるリス。

そして黙したままで、無意識に広げた俺の両手に着地すると、


「ふぅ~。できる美オスは着地も進化しないとね」

至るところの袋を瞬時に仕舞い込んだリスは、得意げにふかふかな毛の胸をそらした。

だから俺は――。


「これのどこが美オスだよ!!」

「イタタタタ。僕のほっぺとお腹をひっぱらないでよ!!」

「あれだけ広げて、これだけ伸びるのに、どうして痛みがあるよ!?」

「イタタタタ。動物愛護団体に訴えてやる!!」


こいつは、リスじゃなくてムササビだったのか?

つーか、この世界にも、動物愛護団体なんているわけ?