バリバリバリ。
究極奥義の発動には、名前など関係ねえらしい。
今度はふたつに分けられた雷が、音をたてて地を走る。
「へぇ、もしかして二方向から中央に向けて鉄の胡桃を走らせているのか?」
リスはリスなりの矜持があるのかもしれねえ。
威力が中間地点で消滅してしまうのなら、二方向から雷を走らせることでひとつに繋げようとしているんだ。
「進化したのは威力だけじゃねえってことか。さすがはセコンド」
カーンと、頭の中で鐘が鳴る。
しかし、そんな究極奥義セコンドも、途中で消えたようだった。
想定内とはいえ、無性に腹立ってくる。
静まり返った中で、チビを待つこと数秒。
――チビが落ちてこなかった。
「まさか、煤になっちまったか?」
流石に俺は焦った。
声がしたということは、奥義発動時にはこの世界にはいたということで、煤になってねえとしたら、裏世界を突き抜けて、大気圏突入の如く、違う世界に行ってしまったのか。
裏世界に隣接する別世界があればの話。
「マジに落ちてこねえ……」
俺は天を遙か遠く見据えながら、大声を放った。
「チビ、チビ!! 生きてるなら返事しろ!! チビ!!?」
その時。
「ふぁ~い」
何とも気抜けするような声がして、ヘンテコなものがふわふわ舞い降りてきた。
そう、"舞い降りて"きたんだ。
「は!?」
それは――。
かつての莫大な貯蔵量を誇った頬袋と腹袋を、パラシュートのように大きく膨らませながら、スーパーマンの如く勇ましい大の字姿で、ゆっくりと降りてくるリス。
そして黙したままで、無意識に広げた俺の両手に着地すると、
「ふぅ~。できる美オスは着地も進化しないとね」
至るところの袋を瞬時に仕舞い込んだリスは、得意げにふかふかな毛の胸をそらした。
だから俺は――。
「これのどこが美オスだよ!!」
「イタタタタ。僕のほっぺとお腹をひっぱらないでよ!!」
「あれだけ広げて、これだけ伸びるのに、どうして痛みがあるよ!?」
「イタタタタ。動物愛護団体に訴えてやる!!」
こいつは、リスじゃなくてムササビだったのか?
つーか、この世界にも、動物愛護団体なんているわけ?

