「"妖蛆の秘密"っていうんだけどね。その中に出て来る魔神の名前らしい。まあ周涅ちゃんは陰陽道育ちだから、魔術書っていうのには詳しくはないんだけどさ、それに詳しい外国の秘密結社の人達が活躍してくれてさ。彼らが"売れる"ために協力してくれたんだよ」
「外国の秘密結社?」
私は目を細めて尋ねた。
「ああ、元白皇が居た処。君達にも接触していなかったかい、呪文を唱えたら蛆になる奇特な人達」
「ひっ!?」
芹霞さんが短い悲鳴をあげた。
「Zodiacは売れたいが為に、近付いた秘密結社の実験台となったんだ。勿論魔術的措置をとられた上での人体実験。平たく言えばさ、体が崩れてなくなっても、怨霊のような"思い"だけで存在出来るように仕上げられたわけさ」
「なぜZodiacが狙われたんだ?」
「有名だった歌手だからさ。歌の上手下手は関係ない。知名度と野心があれば誰でもよかった。歌を提供できる側であれば」
「歌?」
「そう歌。つまり秘密結社と皇城の利害が一致したのが、たまたまZodiacだったということだ」
歌というものの重要性がぼかされる。
Zodiacの歌。
考えて見ればそれは奇怪な出来事の際に流れてはいた。
黄色い蝶が舞う時に。
黄色い蝶。
黄色い外套男。
それも皇城の手の者だったのだろうか。
それを尋ねようとした時、周涅の笑い声に消されてしまった。
「野心という欲って凄いよね、人じゃなくなっても構わないらしい。だけどさ、Zodiacの彼ら、スクリーン越しからしか姿を現せられないみたいでね、まあそこに周涅ちゃんの術と掛け合わせて、密やかに閉じ込めちゃってたりしてるわけだけど」
意味ありげに、くつくつと笑いだす周涅。
「彼らは電脳世界において、人間としての"願い"を持続しているから、向こう側からトップアーティストになれた。こちらの世界であれば、たかだかいち高校生の文化祭の即席ライブで、実力の差を見せつけられる腕前なのにね。喜んでいるよ。だから彼らも協力してくれているんだ。とりわけ彼らを潰そうとした人達は許せないみたいでね、きっと出会ったら攻撃してくるだろうね。まあ、君達に言っても仕方が無いだろうけどさ」
知っているんだ。
知っていて、言っている。
Zodiacが私達に恨みを抱いていることを。
「だったら、Zodiacは……もう人間じゃないの?」
芹霞さんの問いに周涅は薄く笑う。

