「教えてあげなよ、久涅ちゃん。君がどれだけ玲くんのパパに愛されてきたか。同じ息子の玲くんを道具にしても君への愛を貫こうとしたんだから。そこの玲くんはパパの愛を知らないみたいだし」
周涅を挟むように、久涅と玲様が対立する。
同じ父親を持ちながら、与えられた愛情が違う異母兄弟。
次期当主という肩書きを、後代に奪われた者同士。
「いらない」
玲様は即座に言った。
「僕の父親は、男としては最悪で、紫堂当主に追放されて死んだ。それでいい。誰を愛そうと、なにを考えていようと、僕をなにに利用しようと。僕は僕だから。僕には、父親以上の存在がいる」
それは、父親の愛を独占した久涅への挑発でもあるように聞こえた。
"お前には、父親以外の愛を受けたことがあるのか"
もしかすると、玲様は心の底では父親の愛が欲しかったのかも知れない。
母親の偏愛を受け、数奇な運命を辿り、蔑まれても生き続けた玲様は、いつでも助けに来ない父親を、実は密かに待っていたのかも知れない。
だけど玲様はそれを認めはしないだろう。
玲様は父親を切り捨てて、その分玲様を慈しむ櫂様を愛してきたのだから。
玲様の意識は、櫂様を超える偉大なる存在はいない。
唯一無二の存在なのだ。
だから、久涅を挑発したのだとすれば、それは無意識の成せる業。
そして久涅も、挑発的な言葉の意味がわかったのだろう。
切れ長の目をすうっと細めて、表情を冷ややかなもので覆った。
「だけどさ、久涅ちゃんや玲くんの運命を握っていたのは、パパじゃない。その弟の方さ」
紫堂現当主。
「紫堂当主はしたたかな男さ。それでいて恐ろしく頭がいい。彼は電気の力を多少なりとも使える君達のパパを使って、電脳世界の掌握を目論んだ。それが無理だとわかれば、後代に力を増す紫堂の"常識"に賭け、生まれた君達を使おうとした。しかし電気の力を持たない久涅ちゃんの生まれは特殊だから、パパはそっちにかかりきり」
周涅は笑った。
「そんな時久涅ちゃんを助ける"TIARA"計画たるものを知り、それに乗じた。願いこそ違えど、目指す到達地点は同じ。利用されていることに気づかない哀れパパさんは、電脳世界の力を得るために、裏世界に渡った。"TIARA"計画の核たる玲くんの子供の遺伝子データや形骸を持って」
玲様も久涅も黙って聞いている。

