シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「君ならわかるだろう、玲くん。この電気量の凄まじさ。少し前の東京都の停電時に失われた電気量の何十倍だと思う?」

唐突に、まるで世間話のように触れられたその話題。

軽いものへと変えられる口調は、彼に余裕がある証。


なにかの理由があって、彼は余裕を取り戻したのだ。

それは肉体の回復が理由ではなく、突如の精神的な高揚が起因のようにも思えて、私は得体の知れない不安を感じた。



「あの東京都の停電は、皇城の仕業だったのか!?」


かつて東京で、瞬間的な停電に東京の主要データが消え去った。

そしてその停電は、"約束の地(カナン)"を作った白皇の狂う原因を作り出したものでもある。

玲様はそれがひっかかると、藤百合絵を使って調べさせていたものだった。


「あれは、皇城ではないよ。玲くんのパパの仕業さ」


また話題にのぼる、玲様の父親。

紫堂現当主の実兄。


「君と同じ電気の力にて、電脳世界の入口を開けようとした。その為に東京都の電力を利用しようとしたみたいだけど、力足りなく失敗してしまったけどね」


私達は訝った目を周涅に向けた。


「だから別の場所でそれをやり遂げようと、電脳世界の"繋ぎ"となる君の子供の情報を持ち去って、逃げたのさ」


周涅は侮蔑めいた目で笑いながら、言葉を続けた。


「裏世界にね」


ウラセカイ?

それは今――


「そうさ。君達が大好きな元紫堂次期当主とその飼い犬と、ウチの我侭な次男坊が居るところさ」


やはり、わかられているか。

櫂様が生きているということは。


「君とそっくりなパパさんに、君の従弟達も驚いたろうね」

「生きているのか、裏世界に!?」


玲様が驚いた顔をして周涅を見た。

「そりゃあ久涅ちゃんのパパでもあるからね。久涅ちゃんを生かせるために、地の果てでも行くだろう。玲くんにとってはどうしようもないパパでも、久涅ちゃんにとってはうざったい程、息子を耽溺するパパだからねえ、そうだろう?」


促された場所には、久涅が居た。

私達の入ってきた穴からではなく、どこかこの部屋に通じる扉があるのだろう。


聞かれたのか、櫂様が生きていること。

いや……もうとうに知っているか。


別れた時と同じ黒い外套を羽織ったまま、櫂様と同じ顔をした久涅は、気怠げな顔をこちらに見せたまま。


クオンが威嚇していたがそれをやめた。

久涅に戦意はなさそうだ。