美咲や玲様の過去の恋人を使い、紫堂当主が中心となって生み出していた玲様の子供。
紫堂本家で"失敗作"とされたその子供は、形を変えてこうした"TIARA計画"として今も生き続けていたというのか。
「この茶色いものは一体……」
玲様の視線が断続的に止まる。
びっしりと詰まった容器の中には、茶色以外のものも混ざり、水も入っていた。
「茶色と白……?」
ピーという機械音がして、すぐそばの円筒の容器の電気信号が緑色から赤色になった。
するとその容器は自動的に奥に引っ込み、そして上から新しい円筒状の容器が降りてくる。
その中に入っているものはやや濁りが見られる透明な液体と、チューブで繋がれた白い輪郭。
間近に見たそれに、私はその正体を知った。
ああ。
この容器に入っているのは――
「胎児なんだね、この姿は……」
玲様が言う通り、体を丸めた胎児の姿に見えた。
茶色いものは、胎児の枯れ果てた姿なのだ。
そう考えれば、水溶液は胎児を生かす羊水なのだろうか。
誰かが産み落としたとは考え難い胎児の数、人工授精かなにかで増殖された人の器なのだろう。
そして多分この胎児は――
人間として成長出来ない。
茶の色は……生より死に近くなった証拠の色で、やがて朽ち果てる。
その状態のまま、周涅が隠したい程に"機能"しているのだとすれば、玲様の遺伝子を持つこれらのものは、人としての成長を望まれていない。
――玲、お前の遺伝子を継ぐ者達だ。
朱貴が"遺伝子"という単語を故意に用いたのならば、胎児として生かされているのは、命ではなく遺伝子。
そして役目を終えた時、繋がれたチューブによって、精という命を吸い取られているように見えた。
「なんて残酷な……!!」
ずっと利用されているのか、玲様の子供までも。
愛とは無縁な方法で此の世に生まれ、それが失敗だと唾棄された後は、なにかの道具として姿を変えて尚も"生かされる"。
遺伝子に心があるのかわからない。
しかしもしも心があるのだとすれば。
この容器の中で、彼らはなにを思うだろう。
私なら願う。
早く、殺してくれと。

