それは、自分の目で確かめた"行動悪"に対する懲罰ではなく、命じられた捕獲者が粛清対象なのだと初めから植え付けられているよう。
洗脳という言葉が相応しい。
それ以外の取る術を、自警団は自ら見出すことが出来ない。
考えて思考する"心"を失っているように思える。
恐らく――
心を壊すことこそ、更正施設の存在意義なのだ。
そこには人間としての"完全"さは必要ない。
風紀を正すというのは、東京において大々的な捕り物劇を可能にするためのただの口実。
命令に従順に従う、ロボット確保に自警団は作られたとしか思えなかった。
仲間を増殖させるために、心がここで犠牲になっている。
「桜、ここはあたしに任せて玲を!!」
今までの感情を払拭し、敏捷的な身のこなしで、既に戦闘態勢に入り、洗練された力をいかんなく発揮している七瀬紫茉。
「そうだよ。あたし達だってこのレベルならなんとかできる。だから玲くんを!! 動く敵は紫茉ちゃんに任せて、由香ちゃんとあたしは防衛隊。はい由香ちゃん」
「おう、ありがとう。葉山、"が~るず隊"に任せて、師匠を!! 師匠が一番大変なんだぞ!!」
芹霞さんはクオンから飛び散った、カバンの参考書を拾い集めて遠坂由香にも渡し、ふたりで人垣の築かれた入口に向かい、こちらに入ってこようとする自警団の頭が見える都度、分厚い参考書で容赦なく叩き始めている。
リアル"モグラ叩き"だ。
人垣の重みが、思った以上に自警団の攻撃力を奪っているようで、これなら素人であるふたりでも十分対応出来る。
皆それぞれ、やれる範囲で頑張ろうとしている。
昔のように私達が守ってあげなければいけないか弱い存在ではないんだ。
それが寂しいようで、頼もしいようで。
「そんな感慨に浸っている暇はないな……」
ならばここは――。
「"が~るず隊"の皆さんにお任せします!!」
「「「任せて!!」」」
三人揃った元気良い返事が聞こえてきた。
「玲様、私も加勢致します!!」
「桜、僕のことなら……」
「彼女達は大丈夫です。少しずつでも、強くなっているんです」
そして私は裂岩糸を周涅に放てば、案の定すぐ燃やされて。
「そんなにぷちぷち潰されたいのか、ああ~!!?」
怒れる周涅のこの早さが、彼の全力なのだとしたら、その動きが思った以上に鈍く感じるのはなぜなのだろう。
それなら鎌倉皇城本家や、木場での方がまだ力を感じられた。
朱貴が気になって仕方がないのと、
応戦する玲様が強くなったのと。
それだけではないように思ったんだ。
壁が壊されるという危機感を抱いているにしても、彼の全力が感じられない。全力を引き出す"余裕"の底が浅すぎる。
一体なにに気を取られている?

