シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「小賢しい!!! 邪魔だどけ!!」


周涅の振り上げられた足を、掴んだままの手を軸にして、身を捩るようにして受け流す玲様。

するりと周涅の攻撃力を体外に流すことで、攻撃から逃れているその様は、まるで舞踊のようだ。



「文曲、廉貞、武曲、破軍! 我、北斗星君に願い奉る」



「粛清を!!」

「粛清せよ!!」


突如割って入った大勢の足音と声に振り向けば、壊れて間口が広くなった入口から複数の自警団が雪崩れ込もうとしていた。

私は裂岩糸を操り、まとめて縛り上げると、人型を損なわない程度に天井にぶつけて体の機能を休止させ、入口を塞ぐ人垣を作る。

しかし数人内部に逃がしてしまい、それらを裂岩糸で縛った時、玲様と戦う周涅に纏わり付くように飛び交っていたクオンに向けて、苛立った周涅が凄まじい外気功を発した。




私は――



「ニャアアアアン」


クオンの体が弾け飛ぶのを見た。




「いやああああ!! 化けネコ様!!」

「クオン!!」



様々な絶叫が飛び交う中、


「!!!?」


弾けたのは、カバンの方だった。



「あ……」



芹霞さんのただそのひと言に、皆が態度を追従させる。



難を擦抜けたふさふさの白い胴体は――

そのしなやかで美しかった胴体には――


三本のハゲ模様がついていた。


今まであまりに奇天烈な姿をさらしていただけに、この姿が本当のネコの姿のような気もするが、


「神崎……化けネコ様、次は何になったんだい?」

「ハゲネコさまだよ」

「あの美猫が……笑っちゃいけないとわかっているけど、ぷっ……。駄目だ、あたし我慢できな……ぷぷぷっ」

「紫茉ちゃん、今そこドツボにはまって笑うところじゃないから」

「七瀬、しっかり!! 君は状況判断出来る子だろ!?」

「ひいっひいっ……」


三人の声を耳にしながら、私も込み上げる笑いを押し殺しながら、縛り上げた自警団を壁に打ち付け、朱貴の加勢をしてみるが、皹ひとつ入らない。

壁に攻撃をしたことで、周涅の攻撃の手も私に回って来た。

手刀が突き出されたということがわかったのは、玲様が腕でそれを弾いてくれたからで、私はこの速度の中での戦闘を繰り広げられていた玲様の成長に、改めて感嘆してしまう。


「桜、こっちはいい。芹霞達を頼む」

「しかし……」


ちらりと芹霞さんに目を向けた時、また入口の人垣から、数人匍匐(ほふく)前進するような侵入者がいた。

私は"生ける屍"を思い出してしまう。

殺しても尚、食欲という本能に突き動かされて動くあの存在のように、自警団もなにかに取り憑かれたかのように必死で。


「粛清を……」