シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



俺は溜息をつきながら、煌の背中を叩いて言った。


「煌。あれは左から、ピンクのスカートを着たセリカ、ズボンにポニーテールのナナセ、白衣を着たタマキだろう。ナナセを取り合って、セリカとタマキが喧嘩しているんだ、きっと」


「あ?」


やがて――。

右側の……白衣のタマキらしき式神が、ナナセらしき式神を勝ち取ったようで。左側のセリカらしき式神がぽんと弾き飛ばされ、地面に転んだ。


そしてタマキがナナセを胸に抱くようにして、1つになろうとした途端、



「タマキ、合体禁止!!」


焦った翠の声に、タマキはがっくりと項垂れてナナセを両手で突き放すように遠ざけた。

術者の命令に素直に従うのは、翠が一番最初に作っていた七体の小さな翠の式神達よりは、使役力が強くなっている証なのだろう。

三体が翠の命令を待っているかのように、こちらに顔を向けた。

必然と俺達も、そこで初めて式神達の顔を見ることになる。



………。



「小猿……」

「……あい」


そして煌は怒鳴った。


「自分以外の顔くらい、3次元で記憶しろ!! あれの何処が芹霞なんだよ!? お前が散々見慣れている朱貴や七瀬まで、なんで"へのへのもへじ"なんだ!!」

「が、がんばって思い出しながら、リアルに作ったんだ、俺は!! 式神の声帯と引き替えに、リアルに…そっくりに!!」

「お前のリアルは、へのへのもへじか!! お前俺も櫂もへのへのもへじって認識してんのか!?」

「顔っていうのが、絵心ない俺には一番難しいんだよ!! 凄くエネルギーが消耗するんだよ!!」


翠が今回作りだした式神は、簡易に作られた人形のようで、昔芹霞がイチルのために作った人形より、出来はよくない。

大きさはやはり十五センチほどで、今回は喋らないらしい。

翠の目にも、芹霞と朱貴が七瀬に執着しているように見えていたのだろうか。そこの部分だけはやけに忠実に表現されている。

「絵心って…顔は記憶と同じに作れば……。待てよ、お前が足りねえのは、記憶力よりセンス? あの小々猿犬作った奴だからな。センスだよ、美的センス!! お前美術の成績、十段階でなによ!?」


桜華は桐夏の姉妹校だから、成績表は十段階のはずだ。


「俺……1」


すると煌が豪快に笑った。


「がははははは。だろだろ? 俺は2だ!! 天と地の違いだな」

「く~」


……1と2の違いを見いだせない俺は、薄情なんだろうか。


「僕のセリカ~~ッッ!!」


そんな時だった。

いじけたようにぽつんと体育座りをしていたセリカが、突如吹いた風と共に、視界から消えたのは。


そして――。


「ふふふ、セリカ~。セリカだッッ!! 嬉しいな、僕に会いに来てくれたの、セリカ~」


レイが煌の頭の上で、隣に座らせた…掻っ攫ったばかりのセリカにすりすりと頬擦りをして、満面の笑みを向けていた。


そう、へのへのもへじのセリカに。