シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「ほほほほ。レイ殿。わらわが癒してさしあげるぞえ?」

ふわふわと飛んで来た吉祥が、レイの頭を撫でた。


「……!? 目の前に胡桃が降ってきた!! 胡桃、胡桃!!」


幻覚を見せられたのか。

しかし、その喜びようは見ていてもよくわかる。

元気なく寝かされていた尻尾は、突如ぴんと立ち上がり、ふさふさとした毛ごと大きく揺れた。レイが伏せていた顔をおこせば、それまでどことなく虚ろだった目は、実に活き活きと。そして満面の笑みととなり、即座に立上がると二本足でぴょんぴょん飛びはねた。

なんてわかりやすい、自称俺の従兄なんだろう。


「こら!! 俺の頭の上で跳ねるな、騒ぐな!!」


吉祥に術をかけられた結果、翠は満腹感、護法童子は具体性はよくわからないなりにも、事実戦意が回復していた。

もしかして吉祥の癒しというのは、相手がその時に望む幻影を心に流し込んで、精神面の充足を植え付けることで、癒された者が無意識に肉体への満足感にすり替えているのかもしれない。

心が満たされれば、肉体も満たされると。


だから多分、俺や煌が癒されるのだとすれば、きっと芹霞が微笑んで立っているだろう…。


翠の精神力と引換えた、心が望む幻影。

それでも癒されたいと、その時の俺は願うのだろうか。


「ここが三つ目ぞえ?」


石碑には「参」と緑色で刻まれている。

その時だ。


「きたああああああああ!!」


突如響いた翠の雄叫びに、少し仰け反り気味になった俺は、


「いでよ、式神!! 急急如律令!!」


それでも翠が生み出す新たなる式神の誕生を見守った。


石碑に行き着くことに誕生するのは、偶然なのだろうと思う。

2つ目の石碑からの時間は、最初より格段に早かったから。

翠が式神の召喚時間を短縮して、成功させているんだ。


そして、目の前に現われたものは――。




「……団子?」




煌が目を細めた。



西瓜くらいの大きさをしたものがごろりとある。

色取り取りの……マーブル模様の円球だ。


どう見ても人型ではない。

式神は……人型以外もアリなんだろうか。



「小猿、お前今度は……」

「つくったよ、三体、俺作ったよ!!」

「お前まで俺の肩で飛びはねるな、降りろ降りろ!! なあ、小猿。あれはどう見ても失敗……」

「ワンコ、今度は俺の顔じゃないから!! 一生懸命念じたから!!」

「まるで聞いちゃいねえし……」


「ほほほほほ」

「中には巨大な胡桃が入っているのかな、カリカリしようかな」



式神はこの円球なのか。

それともこの中に入っているものなのか。



謎めいた円球は、突如ブルブルと小刻みに震動を始め――



「!!!?」



俺達は目を瞠った。