旧知の間柄だから、懐かしんで思い出話を語りたいのだろうか。
そう思ったけれど、今までいつも笑みを絶やさなかった吉祥の、やけに堅い表情が気になった。
「え、ああ……」
「そうか……。わらわの勘違いであるか……」
ツインテールが、翳った顔を隠したいように風に揺れていた。
「なにか感じたのか?」
すると翠を僅かの間見上げると、声のトーンを落とした。
まるで主に聞かせたくないというように。
「……揺れておる。翠殿と……別の術者との間に」
さらに硬くなる口調に、俺は思わずこくんと唾を飲み込む。
煌も聞いてはいるらしいが、自分が話せば翠に聞こえると思ったのか、傍観者に徹する気らしい。
「ああ、それは護法童子も言っていた。この九星の陣に攪乱させられていたようだったが、なんとか乗り切ったように思えたが?」
吉祥は、心配そうに目を細めた。
「………。万が一、わらわ達式神が、翠殿の命を裏切るようなことがあれば、わらわ達の力の分だけ、翠殿に返る。別の術者にとれば、呪詛返し……というもの。人の身では弾け飛ぶぞえ?」
「護法童子は翠に忠誠誓っている。裏切ることは……」
「わらわも信じておるが、万が一の話。剣鎧は頭も鎧のように硬いゆえ、そこを突かれれば……思うたまで。剣鎧が、別の力の存在を認めておるのなら、回避策を考えておると思うぞえ?」
ひとり頷きながら、桜の姿をした翠は再び移動速度をあげ、瞬く間に前方に点となり、俺達は速度を上げておいかけた。
吉祥の力により一定範囲内に近づけないスクリーンが、ばさばさと俺達の切る風に翻っている気がする。
――人の身では弾け飛ぶぞえ?
不吉だ。
これが予言にならねばいいが。
翠が大きなものを作り出している分、そこを突かれて周涅に利用されれば、翠の命が危なくなると言うのなら。
それでもいいと、実の兄も許容していたということにもある。
周涅は、雄黄の許可なく無断で動かない気がする。
周涅の意思を雄黄の意思とするのなら、周涅の企みこそが雄黄の心。
これ以上、翠の心を傷つけたくないのに。
「おお、櫂!! 3つ目が出て来たぞ。この"ぞえぞえ"サクラの速度は半端ねえよ。スクリーンも動きについてこれず、ばさばさだったしよ。薄い形が祟ったよな。壁とかだったらまた違ったんだろうけど」
「はあ…はあ……っ。早すぎだよ……考えながらポイポイしている僕のことも考えてよ…。落ちちゃわないように……だけど僕は落とさないといけないんだぞ……。僕、凄く頑張った…ふう、ふうっ…ちょっと休憩…」
レイは煌の上でぱったりと倒れた。

