そんな和やかな中、悪いと思ったけれど、長々としていられない状況を思い返し、俺は強引に場を仕切った。
「では翠は引き続き、あと三体の式神を頑張ってくれ。そしてそこにある「二」の石碑だが……」
「おお、櫂殿。ではここは我が。吉祥様なら、皆様を正しき道に案内して下される」
「任せよ。事情は翠殿から聞いておる。九星を抜ける道をわらわが案内いたすぞえ?」
ふわふわと宙に浮いたまま先導しようとする……翠の顔をした桜。
「こちらにこりゃれ」
小さい手をひらひら動かして俺達を招く。
「よし、じゃあゴボウちゃん、ここはよろしく頼むね」
「お任せあれ!!」
また煌に肩車をされた翠は、護法童子に手を振り即座に白目になった。
「小猿、集中する前に小猿!! 今度は小猿の顔ではない式神を作れ。笑いはとらなくていいから」
「俺、笑いなんてとるつもりは……」
「いや、お前はお笑い芸猿の素質がある。否定するなら、お前の顔ではないものを作れ」
「俺、狙っているつもりは……」
「……三体作るのなら。ひとつは、芹霞を忠実に再現しろ。特に胸のあたりはこう……」
「コホン!!」
俺は咳払いをして、両手でジャスチャーを始めた煌を軽く睨み、そして言う。
「式神のセンスは翠に任せよう。作れるだけでも凄いものなのだから。――さあ、行くぞ煌、翠、レイ!! 吉祥、案内を頼む」
「ほほほ。お任せあれ。では行くぞえ?」
「ぞえ?はいいけどよ、俺達は急いでいるんだ。先導者がそんなふわふわ……」
煌の言葉が言い終わる前に、突如吉祥は瞬間移動並の早さで移動した。
「早う。行くぞえ?」
いきなり遙か遠方、黒くて小さなものが手招きしている。
「あいつ、なんだよ、おもしろすぎる!! イライラするくらいのんびり口調のくせ、なんだよあの速度!! 絶対俺、あの速度に負けたくねえ!!」
褐色の瞳が、好戦的にキラキラ輝き始めた。
「ほほほほ。やってみるがよい。わらわも負けぬぞえ?」
それに応じるように、遠方より吉祥の声がして、俺は苦笑した。
俺達が石碑に背を向けて、吉祥に向かって走り出した途端、後方で護法童子の気が爆ぜた。
「ぬををををを!! 吉祥様に力を頂いたこの剣鎧の力、見せてやるわ!! 食らえ、三尸!!」
元気な声を聞く限りでは、大丈夫そうだ。
今は――。
「のう、櫂殿……」
走る俺の真っ正面に浮いた吉祥が、声をかけてきた。
後ろ向きでも高速で移動出来るらしい。煌が悔がっているのが見えるが、吉祥はそちらに顔を向けることなく、じっと俺を見つめてくる。
「剣鎧は……いつもあんな感じぞえ?」

