「優しくて力が強いなら、サクラじゃなくて僕でもいいじゃないか。もちろん、肖像権の使用で胡桃を支払ってもらうけどね」
「だから、小賢しいお前は黙ってろ!! げっ。今…顔が小猿、体がリス、声が玲バージョンを想像してしまったじゃないか!!」
……なんだか煌が大変そうだ。いつも思うが、やはり煌は面倒見がいい。休むことなく複数相手に怒鳴ってばかりでも、律儀に突っ込むのを忘れていない。
そんな二人と一匹の横では、式神同士の挨拶は続いており、やがて、
「吉祥様、遠い場所より遥々おこし頂き、お疲れでしょうな。我の拠点にて、少しお休みされたらいかがか。こちらです」
「ほう……。中々の拠点。ふかふかして居心地よさそうじゃな。ではわらわも参るぞえ?」
「おいこらッッ!! 勝手に俺の頭に飛び乗るんじゃねえ!!」
「わわわ、ここは僕の巣なんだからね!? まずは僕に話を通すのが筋じゃないか!?」
「剣鎧、この者達は誰ぞえ?」
「おお、まずは拠点を快く提供くださっているのがワンコ殿。そしてこちらは、ワンコ殿が仕えるリス王国の皇子、レイ殿であられる。レイ殿はこのたびわが主に協力くださっている。
ワンコ殿、レイ殿、この方は天界きっての美神と誉れ高い、吉祥様……」
「事実無根な自己紹介なんていらねえ!! 俺……あちこち突っ込んでいる暇なんてねえんだよ、先に進みたいんだよ、がああああっ!!」
煌がショートしそうだ。俺は慌てて事態の終結に努めた。
「吉祥天。私は紫堂櫂と申します。今は貴方達の主、翠の力を借りて一刻も早くこの術を破りたい。それに協力して下されば助かる」
翠は決して力がないわけではない。顔と声はなぜか自分のもので、美と慈悲の吉祥天の体がなぜ桜かはわからないが、この二体の式神の会話を信じるのなら、かの有名な越後の上杉謙信が奉った闘神、毘沙門天の眷属が剣鎧童子、毘沙門天の妻が吉祥天だ。
式神の大きさや術者たる翠に依存することから、使役したい式神の力は完全に再現できていないかもしれないが、降臨させたのものは名前だけでもかなりの大物だ。
見た目では濃すぎるキャラでギャグめいてはいるけれど、秘めたる力は周涅が見れば舌打ちするレベルだろうと想像する。
結界は護ろうという意思により発動するが、吉祥の光輪の力は、まるで呼吸をするかのように自然と、スクリーンの猛威を広範囲に弾いているようにも思えた。
護法童子は武力に優れていたが、吉祥はこうした防御系の術に秀でているのかも知れない。

