そして現れたのは――。
迫り来るスクリーンを弾き飛ばすほどの威力ある、まばゆいばかりの光輪を後背にした、
「え!?」
ツインテールの……見慣れた黒尽くめの服。
「――桜!?」
だけど――。
「顔は小猿!?」
大きさは護法童子やレイと同じくらい、格好は完全に桜を模した黒服にツインテール、だがその顔だけは翠。
彼女(彼?)は、ふわふわと…俺の目線の高さで浮いている。
「できた、できたよ!! ……けどちょっと休憩。しんど…」
煌は無言で、疲れ果てた顔で喜ぶ翠を肩から下ろすと、
「おい、小猿。仮にも神だと公言する式神を先輩に作っておいて、その後で作るのがなんで桜なんだよ!?」
爆ぜたように翠に怒鳴り、地面に座りこんだ翠は、そのままの体勢で器用に飛び上がった。
ふわふわふわ…。
その横では、桜の姿をした式神がずっと浮いたまま、静かに微笑み続けながらふたりを見ている。
慈愛深く……翠の顔で。にこにこと…翠の顔で。
「金ピカ小小々猿を見てみろ!! 期待を裏切られた、あの泣き出しそうな顔!! お前の顔なんだから、小小々猿の気持ちくらいわか……」
「おお、これは我の眷属神毘沙門様の后、吉祥様ではあらぬか。お懐かしい!! このような場所でおあいできるとは、我…剣鎧(けんがい)は感涙致した!!」
「……小小々猿の気持ちを……」
「ほほほ、剣鎧久しゅう。わらわも同じ主に使役された身、天界での身分はさておき、ここは苦しゅうなく、ひとつ、仲良くやろうぞえ?」
「なんと心お優しい。美と慈愛のさすがは吉祥様……」
「気持ちを……」
「ほほほ、なにを言うておる。わらわとお主は同じ顔をしているのぞえ?」
「おお、そうでありましたな。声も同じ」
「気持ち……」
「ほほほほほ」
「ははははは」
「小猿!!! お前、"ぞえ?"の"え?"だけを極端にトーンを上げる、その気が抜けそうな女声と、単純過ぎてただの痛い子にしか思えねえ早口のおっさんみてえな男声で、和やかにひとり芝居するなよ、気持ち悪っ!! うわっ、チキン肌になったじゃねえか!!」
「くくくく。ワンコがチキンだって。それは"へたれ"ってこと?」
「うるせえ、黙れチビリス!! 俺は小猿に用があるんだよ。小猿。なんでまた同じ顔よ!? なんでしかも桜よ!!?」
「だ、だって…。俺達を助けるような優しくて力が強いもので、リアルに心に思い描けるものをと思ったら…葉山が…。俺に懐いてくる葉山を思ったら……」
「があああああ!! ぽっとなるな、ぽっと!! だからって、桜と合体させるな、ただ気色悪いだけだッッ!! 色んな意味で合体は無理だ、お前には!!」
いまだよくわからない。なんで翠は、桜のことを語る時、赤い顔でもじもじするのだろう。
桜は男だってわかっているだろうに。

