そしてようやく――、
「師匠あった!!」
「玲様……」
桜が指さすその部屋に、地下に続く簡素な石階段が現われた。
上階はないから、ここは最上階だったらしい。
僕の見立ては間違っていなかったようで、ほっとする。
そして桜が書き込んだ地図に、僕は目を細めた。
「結局階段があったのは、起点最初の部屋の右側ドアを開け、更に2回……合計3部屋分右側に歩いた処にある部屋だったのか」
γ↑Sµγ→SµK◎γ←SµCH□R●CH◇γ□
矢印は3つ。
その中に右矢印はあるけれど、これだけで法則性は判断はできない。
僕達はとりあえず階下に降りた。
目の前に左右に長く続くのは――
「うげっ。まるで同じじゃんか」
代わり映えのない……廊下の景色。
形状はいままでと同じ円環とはいえ、距離はどうなんだろう。
それにより2行目も同じ由香ちゃんの歩幅に合わせて良いのかが決まってくる。
桜が拍子を取り、芹霞の歌うリスの歌に合わせて、全員が行進する。
………。
また微かに聞こえてきた。
「ニャニャニャニャニャニャニャ~♪」
目を閉じたまま、小刻みに頭を揺らしてリズムを取る化けネコ。
芹霞とユニゾンしたいのか、リスに汚染されているのか。
目を閉じればばれないと思っている、歌うネコの浅知恵。
「化けネコ様にもプライドあるだろうから、スルーしてあげよう?」
プライドある化けネコなんて、聞いたこともないけれど。
化けネコが気持ちよさそうに口ずさんでいるから、知らない振りをすることにした。
「この階も一周分ですね」
降りて来た階段がある場所は、唯一中心部側でドアがない…中が開示されたままの小部屋にある。
異質すぎてわかりやすい場所は、歌い始めと終わりに目にできた。
しかしそこが暗号の起点となる程、展開は単純ではなく、起点探しはしないといけないらしい。
このフロアのドアの数は全36個。
廊下の距離は上階と同じでも、部屋の数は違うらしい。
「ええと、2行目は――」
K◆γ↑SµαNZµN□M↓GααKα←Z◎Tα
ピックアップされているドアは、起点から1歩目と、更に5歩目、もう5歩目の合計3つ。
上階の結果から推定するのなら、階段に至るドアは「◎」がついているものだ。
つまり起点から歩いて11歩目にある3つ目のドア。
「ここですね」
ドアを開ければ、初っ端から小さな部屋に左右にドアがあった。
「暗号の矢印は3回、ドアは2つ…。該当行での矢印の出現回数は、「◎」の部屋にあるドアの数ではないことは確かだね」
「だったら師匠、矢印の回数は、この部屋から階段がある部屋までに通る、部屋数説でいこうよ。つまりこの階では、ここから3つ目の部屋に、階段がある」
「左と右、どちらに行きますか?」
「………。ん、暗号の矢印で左右を示すのは左だけか。とりあえず左に行こうか、桜」
「はい、玲様」
「上の階と同じなら、同じ方向のドアを進むことになるんだけど……ん、どれも左にドアがあるね。そして3つめの左側のドア。桜開いて。……うん、階段だ」
上階よりは早く階段を見つけられた。
推測は、ルールとなる。

