「師匠、これはなんのプログラムだい?」
「フェイクの監視画像つくり。監視カメラが映しているものを一旦画像として切り離し、それを画像化して本当の監視カメラへ直接すりかえる。つまりいつ見ても、監視カメラの映像は一定、変わることがない」
「セキュリティ認証はどうするんだい?」
「ああ、美咲さんが認証している時、僕の力で少しずつセキュリティレベルを下げていたんだ。加えて人感知のセンサーを今から無効にするから、大丈夫だと思う」
カタカタカタ…。
「師匠、終わったよ」
「よし。そしたら今度は僕自身が、ここのネットワークに入るために中継するから、「GO」ボタンを押して。桜はそれより一秒ほど早いタイミングで、監視カメラの主電源回線を引きちぎれ。サーバーセキュリティーをそちらに目を向かせて、僕が置き土産して平定する。いいね、桜、由香ちゃん、僕のタイミングだ。じゃあ行くよ、3、2、1……」
なにがなにやらわからぬ間に、それぞれがそれぞれの仕事が終えたのが「0」カウントから2秒後くらい後。
カウントダウンを含め僅か5秒でことは終えたらしい。
見ているだけのあたしとしては、なにが変わったのかよくわからないけれど、玲くんはご満悦みたいで、
「じゃあ行くよ」
あたしを抱いたまま、すたすたと足早に歩き始めた。
無言のセキュリティ認証機械を通過。
化けネコ様を怒らせた監視カメラも通過。
由香ちゃんがあかんべを向けても、無反応だ。
「凄いや師匠。師匠がいればどんな所でも盗みに入れそうだよ」
「最新のセキュリティ事情を調べるために、やってみようか。桜も入ってよ。お前は鍵破りはお手のものじゃないか」
「い、いつも鍵を破っているわけでは…」
朗らかに、だけど小走りに。
至って平穏にあたし達は突き進む。
ぽかんとしたままなのはあたしだけ。
いや、化けネコ様も不思議そうな顔で監視カメラを見ている。
攻撃されたら反撃でもしようと息巻いてでもいたのか、なんとなく拍子抜けしているような表情を見せ、美ネコは小首を傾げている。
なんだか似ている、あたしと化けネコ様。
人によって運ばれる、役立たずぶり。
いや、あたしは抵抗はしていて、自分から進んで誰かに運ばれたいとは思ってはいないけれど。
だけど傍目では同類だ。
これぞ同じ穴のムジナ…ならぬ同じ穴のネコ。
「にゃん」
皆に聞こえないようにして、鳴いてみたら…人として無性に空しくなった。

