シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「話さないとわからないだろう? 君は隠してばかりだから、心の現実を」


玲くんは腹をくくっているんだ?


「現実を知らなければ、前には進まない」


進もうとしているんだ、ひとりで。


心がじくじくと痛む。

抉られた傷が膿んだように。


それは美咲さんが吐き出した蛆と重なり、あたしは自分の中に不快な異物が蠢いているように錯覚した。

美咲さん――。

それが精神的ではなく、本当のものであったのなら、どんな恐怖に耐えていたのだろう。


もしもそれが消えてなくなるといわれるのなら、あたしだって誰かの誘いに乗ってしまうかもしれない。


心に湧いたこの蛆が、あたしの心を全て蝕み食らい尽くす前に、救済の道はあるんだろうか。

にっこりほっこりの玲くんの温もりがなくなっても、今までのように笑えるんだろうか。


――芹霞。


聞こえてきたのは、櫂と煌の声。

蘇る、8年間の思い出。


櫂とは、さらに4年間もの思い出がある。


――芹霞ちゃあああん!!



櫂には、守られてきた思い出がある。



そうか。


あたし、玲くんを失っても、ひとりじゃない。

あの暖かさがすぐ手に入るのなら、あたしが凍えて動けなくなる前に、早く帰ってきて欲しい。


――芹霞。


会いたいよ、あたしの幼馴染に。

喜怒哀楽を共にしてきた、大切な人達に。


アタシヲタスケテ。


彼らなら、あたしを置いていかない?



「玲様、ありました!!」


桜ちゃんの声があたしの沈んだ心を切り裂いた。

桜ちゃんは、由香ちゃんと粉砕された壁に手を突っ込み、ふたりでなにかのコードらしきものを引っ張り上げている。


なにをしているんだろう?


「よし。じゃあ由香ちゃん、青いノート型パソコン出して、僕が紫茉ちゃんの家で作ったプログラム起動してくれるかな。そしたら今から言う0と1を入力してくれる? 001110101110…」


今までのあたしとの会話を払拭するように、玲くんは司令塔の顔でてきぱき指示を出す。

カタカタカタ…。

即座に追従する由香ちゃんは、パソコンのキーボードを叩く。