「話さないとわからないだろう? 君は隠してばかりだから、心の現実を」
玲くんは腹をくくっているんだ?
「現実を知らなければ、前には進まない」
進もうとしているんだ、ひとりで。
心がじくじくと痛む。
抉られた傷が膿んだように。
それは美咲さんが吐き出した蛆と重なり、あたしは自分の中に不快な異物が蠢いているように錯覚した。
美咲さん――。
それが精神的ではなく、本当のものであったのなら、どんな恐怖に耐えていたのだろう。
もしもそれが消えてなくなるといわれるのなら、あたしだって誰かの誘いに乗ってしまうかもしれない。
心に湧いたこの蛆が、あたしの心を全て蝕み食らい尽くす前に、救済の道はあるんだろうか。
にっこりほっこりの玲くんの温もりがなくなっても、今までのように笑えるんだろうか。
――芹霞。
聞こえてきたのは、櫂と煌の声。
蘇る、8年間の思い出。
櫂とは、さらに4年間もの思い出がある。
――芹霞ちゃあああん!!
櫂には、守られてきた思い出がある。
そうか。
あたし、玲くんを失っても、ひとりじゃない。
あの暖かさがすぐ手に入るのなら、あたしが凍えて動けなくなる前に、早く帰ってきて欲しい。
――芹霞。
会いたいよ、あたしの幼馴染に。
喜怒哀楽を共にしてきた、大切な人達に。
アタシヲタスケテ。
彼らなら、あたしを置いていかない?
「玲様、ありました!!」
桜ちゃんの声があたしの沈んだ心を切り裂いた。
桜ちゃんは、由香ちゃんと粉砕された壁に手を突っ込み、ふたりでなにかのコードらしきものを引っ張り上げている。
なにをしているんだろう?
「よし。じゃあ由香ちゃん、青いノート型パソコン出して、僕が紫茉ちゃんの家で作ったプログラム起動してくれるかな。そしたら今から言う0と1を入力してくれる? 001110101110…」
今までのあたしとの会話を払拭するように、玲くんは司令塔の顔でてきぱき指示を出す。
カタカタカタ…。
即座に追従する由香ちゃんは、パソコンのキーボードを叩く。

