シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「術が解けたら、僕の力は使えることがわかった」


背後から玲くんの声がする。

にっこり微笑んでいるけれど、なんとなくそこに柔らかさはなく、刺々しく思えるのは…玲くんに対するあたしの感情がひねくれてしまったからだろうか。

きっと玲くんには気づかれていると思う。

ならば察して欲しい。


別れ話をされたくないあたしの心情を。


「ここでこうしていても仕方がないから、監視カメラを破壊しながら突き進む」


「おお、師匠! 強行突破だね」

「時間が勿体ないからね。おいで、芹霞」


予兆なく、強制力を持って…振り向けないあたしの名前が呼ばれた。


「芹霞」


必要以上の距離を詰めたくなかったあたしは、どうすればいいのかわからず固まったまま。


そんなあたしに、さらに声がかけられた。


「シカトはさせないよ」


低く鋭い声でそう言うと、あたしの膝裏に手を差込み、お姫様抱っこをしたんだ。


ワーワー叫ぶあたしは、クオンの頭に抱きついたままで。


「ニャアニャア!!」


クオンが引っ張られれば由香ちゃんも引っ張られて。


「うげ……引き摺られる…」


まるで芋掘りだ。

そんな中桜ちゃんは、なんとも言えない複雑な表情であたし達を傍観していたが、やがてあたしの傍にくると、


「芹霞さん失礼」


脇の下をくすぐった。


突然の桜ちゃんの攻撃に身を捩って笑い始めたあたしの手は、すんなりとクオンから離れ、しまったと思うより早く玲くんがあたしを完全に抱き上げてしまった。


ねじくれた表情で固まっているだろうあたしの顔。

それを見下ろす玲くんの顔は、途方もなく冷ややかに思えた。


あたしが玲くんの別れ話を聞こうとしないからだろうか。

怖いくらいの鳶色の瞳は、怒っているようにも思えて。

あたしの体から血の気がすうっと引いていく。


やばすぎる溝。

僅かの間に開いてしまった距離。


ええと、あたし玲くんにどう接していたっけ?


笑顔。

そうだ笑顔で。


一方的な話をしていれば……。



「芹霞」



あたしの名前が、それを遮った。



「僕は……用済みにはさせないよ」



はい?


玲くんは不可解なことを言って、笑った。

えげつない笑みで。