シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



消えて行く、洞窟のような迷宮の幻影。


代わって現れてきたのは――

現代的な建物内部。


これは――。


「……これ、七瀬がいる場所として、美咲さんに案内された…あの連絡通路だよね?」


まるで校舎内のような、通路とドアが並ぶだけのシンプルな光景。


周涅の出現により、違和感あるこうした建物内の光景こそが幻影なのだとばかりに、ただちにかき消されたけれど。

現実は、その真逆で。


あたし達は、目に見えた真実の光景を、周涅の術によって幻影と思い込まされていたらしい。


その先になにかあると、それは罠なのではと、その不安を煽ったのは美咲さんだけれど、彼女が演技しているように見えなかったのは、彼女もまた先に植えつけられた知識によって、幻影だと思い込まされていたのだろうと玲くんは言った。


周涅の術とはいえ、あたし達はぐるぐる歩いてきたから、今見える場所が、あの時の場所だという可能性は低い。

むしろそう言い切れるだけの、明確な根拠がまったくない。


玲くんは桜ちゃんと顔を天井済に向けて話している。


「僕達の動き次第で、セキュリティーが動くかも知れないな」

「そうですね、美咲さんはいませんし、美咲さんの客という口実がどこまで通用するか…」


彼らは、化けネコを襲った監視カメラを見ているらしい。もう3メートルほども進めば、きっとあたし達はカメラに捉えられるだろう。

もしもカメラの映像を、どこからか周涅が見ていたのなら、あたし達が術から逃れたのは一目瞭然。

いや、術が解けた時点で、既にわかっているのかもしれない。


玲くんと桜ちゃんが、今後どうすべきか話し合っている横で、あたしは由香ちゃんにぼやいた。


「紫茉ちゃんは、本当にこの建物のどこかにいるのかなあ」

「ボク達が咄嗟に叫んだ"七瀬がいる"にひっかかって、周涅や久涅が反応していたから、居ることは間違いないと思うよ?」


そして由香ちゃんは八の字眉で続けた。

「けどさ、周涅が"あの体で"と言ったことが気になるよ。七瀬…虚弱体質っ子だから、例の熱でも出しているんじゃないかな。

周涅はぐにゃぐにゃにねじくれた性格の極度のシスコンと見たし、それに周涅公認の朱貴も傍にいるようだから、まず七瀬はそうした症状以外は無事だと思うよ」

「だといいけど……」


それでも拭えぬ不安。

思わず由香ちゃんが背負うクオンのふさふさな頭を抱きしめた。


化けネコなれど、凄く癒されるのはふさふさゆえか、化けネコゆえか。

回復術でもかけているんだろうか?