消えて行く、洞窟のような迷宮の幻影。
代わって現れてきたのは――
現代的な建物内部。
これは――。
「……これ、七瀬がいる場所として、美咲さんに案内された…あの連絡通路だよね?」
まるで校舎内のような、通路とドアが並ぶだけのシンプルな光景。
周涅の出現により、違和感あるこうした建物内の光景こそが幻影なのだとばかりに、ただちにかき消されたけれど。
現実は、その真逆で。
あたし達は、目に見えた真実の光景を、周涅の術によって幻影と思い込まされていたらしい。
その先になにかあると、それは罠なのではと、その不安を煽ったのは美咲さんだけれど、彼女が演技しているように見えなかったのは、彼女もまた先に植えつけられた知識によって、幻影だと思い込まされていたのだろうと玲くんは言った。
周涅の術とはいえ、あたし達はぐるぐる歩いてきたから、今見える場所が、あの時の場所だという可能性は低い。
むしろそう言い切れるだけの、明確な根拠がまったくない。
玲くんは桜ちゃんと顔を天井済に向けて話している。
「僕達の動き次第で、セキュリティーが動くかも知れないな」
「そうですね、美咲さんはいませんし、美咲さんの客という口実がどこまで通用するか…」
彼らは、化けネコを襲った監視カメラを見ているらしい。もう3メートルほども進めば、きっとあたし達はカメラに捉えられるだろう。
もしもカメラの映像を、どこからか周涅が見ていたのなら、あたし達が術から逃れたのは一目瞭然。
いや、術が解けた時点で、既にわかっているのかもしれない。
玲くんと桜ちゃんが、今後どうすべきか話し合っている横で、あたしは由香ちゃんにぼやいた。
「紫茉ちゃんは、本当にこの建物のどこかにいるのかなあ」
「ボク達が咄嗟に叫んだ"七瀬がいる"にひっかかって、周涅や久涅が反応していたから、居ることは間違いないと思うよ?」
そして由香ちゃんは八の字眉で続けた。
「けどさ、周涅が"あの体で"と言ったことが気になるよ。七瀬…虚弱体質っ子だから、例の熱でも出しているんじゃないかな。
周涅はぐにゃぐにゃにねじくれた性格の極度のシスコンと見たし、それに周涅公認の朱貴も傍にいるようだから、まず七瀬はそうした症状以外は無事だと思うよ」
「だといいけど……」
それでも拭えぬ不安。
思わず由香ちゃんが背負うクオンのふさふさな頭を抱きしめた。
化けネコなれど、凄く癒されるのはふさふさゆえか、化けネコゆえか。
回復術でもかけているんだろうか?

