シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「美咲さん!!!」


慌てて抱きとめた玲くんの腕の中で、美咲さんは静かに泣いた。


あたしは袖を破いて、美咲さんの喉にあてる。


玲くんがそれですばやく応急処置をするけれど、みるみる間に真紅色に染まりゆく生地は、血止めの効果などなにもなく。


止まらない血の具合を、

命の吹き出る具合を、


ただ演出するだけしかなくて。


止まらない。

血がまるで止まらない。


それくらい傷は――

潔いほどに、致命傷すぎたんだ。



「どうして!!!!」


誰もの口からも、そんな狼狽の言葉しか出てこない。


乱れた弱い息の中、彼女が言う。


「この術を抜けるためには……"命"が必要なの」


制しても、彼女は口を開くのをやめない。


「せめて…罪滅ぼしになればいいけれど…」


遠いその目には、なにが映っているのだろう。


「玲くん、結界を……!!」

「…力が作動しない!!」


聞こえているのだろうか、あたし達の声が。


「…お願い……。このままで……。せめて、最期くらい…貴方を助けさせて……ぐふっ」


口からも直接吹き出る真紅の液体。

その中には真っ赤な蛆も混ざっていた。


刺傷によるものか、とうとう蛆が内臓を食い破ってきたのか……それすらもうわからなくて。


「しっかりして、ねえ!!!」


応急処置を施し続け、制服を赤く染める玲くんの顔は、苦渋の色を濃く滲ませたもので。

その必死さと、険しい眼差しが…事態がより深刻であることをうかがわせた。


玲くんにはわかっている。

そしてあたしにも、桜ちゃんにも、由香ちゃんにもわかっている。


美咲さんは助からないだろうということ。


だけど。

だけど!!


言わずにはいられないんだ。


「ひとりの犠牲で全員が助かるとしても、だからといって、そのひとりが犠牲になっていい理由にはならないよ。

そのひとりが、蛆で体を蝕まれていたって、死んでいい理由にはならないよ。

どんな人であれ、あたし達は犠牲を選んじゃいけない!!」


それは誰に対していいたいのか、それすらわからないけれど。


「…わかってる。わかってるよ、僕だって!!!」


玲くんが激情に満ちた目であたしを見た。


「だけど!! どんなに試しても結界すら作れない今の僕は!! 致命傷の彼女を救えないんだよ!!」


玲くんの目から、悔し涙が零れ落ちた。

苦しいのは、感情をぶつけたいのは…玲くんも同じだ。

いや、力がある分だけ、きっとあたし以上で。


だけど。

力がないあたしだって、悔しいんだ!!


あたし達は、犠牲なんて望んではいなかった。