「美咲さん!!!」
慌てて抱きとめた玲くんの腕の中で、美咲さんは静かに泣いた。
あたしは袖を破いて、美咲さんの喉にあてる。
玲くんがそれですばやく応急処置をするけれど、みるみる間に真紅色に染まりゆく生地は、血止めの効果などなにもなく。
止まらない血の具合を、
命の吹き出る具合を、
ただ演出するだけしかなくて。
止まらない。
血がまるで止まらない。
それくらい傷は――
潔いほどに、致命傷すぎたんだ。
「どうして!!!!」
誰もの口からも、そんな狼狽の言葉しか出てこない。
乱れた弱い息の中、彼女が言う。
「この術を抜けるためには……"命"が必要なの」
制しても、彼女は口を開くのをやめない。
「せめて…罪滅ぼしになればいいけれど…」
遠いその目には、なにが映っているのだろう。
「玲くん、結界を……!!」
「…力が作動しない!!」
聞こえているのだろうか、あたし達の声が。
「…お願い……。このままで……。せめて、最期くらい…貴方を助けさせて……ぐふっ」
口からも直接吹き出る真紅の液体。
その中には真っ赤な蛆も混ざっていた。
刺傷によるものか、とうとう蛆が内臓を食い破ってきたのか……それすらもうわからなくて。
「しっかりして、ねえ!!!」
応急処置を施し続け、制服を赤く染める玲くんの顔は、苦渋の色を濃く滲ませたもので。
その必死さと、険しい眼差しが…事態がより深刻であることをうかがわせた。
玲くんにはわかっている。
そしてあたしにも、桜ちゃんにも、由香ちゃんにもわかっている。
美咲さんは助からないだろうということ。
だけど。
だけど!!
言わずにはいられないんだ。
「ひとりの犠牲で全員が助かるとしても、だからといって、そのひとりが犠牲になっていい理由にはならないよ。
そのひとりが、蛆で体を蝕まれていたって、死んでいい理由にはならないよ。
どんな人であれ、あたし達は犠牲を選んじゃいけない!!」
それは誰に対していいたいのか、それすらわからないけれど。
「…わかってる。わかってるよ、僕だって!!!」
玲くんが激情に満ちた目であたしを見た。
「だけど!! どんなに試しても結界すら作れない今の僕は!! 致命傷の彼女を救えないんだよ!!」
玲くんの目から、悔し涙が零れ落ちた。
苦しいのは、感情をぶつけたいのは…玲くんも同じだ。
いや、力がある分だけ、きっとあたし以上で。
だけど。
力がないあたしだって、悔しいんだ!!
あたし達は、犠牲なんて望んではいなかった。

