周涅?
今逃げてきたばかりの周涅さん?
え、あたし達を追いかけてこないのは、周涅の術にあたし達が囚われているから?
真っ赤な目で一番に怒ったのは――
「シャアアアアア!!!」
なぜか化けネコだった。
この化けハゲネコさまのお怒りポイントはよくわからない。
「師匠は、七瀬と共に夢の彼方だったから、覚えがないのか」
由香ちゃんは納得したように頷いた。
「朱貴の加護で葉山が如月と周涅の元に行ったから。七瀬が如月と駆けつけたから。もしくは、あそこに全員が集合して周涅の力に勝ったから。…あの時、どの要素が功を奏したのかはわからないけれど、今ボク達の打開策として、これらのうちとれる方法はあるかい?」
朱貴や紫茉ちゃんがいなければ、櫂も煌もいない現状。
ここから外に出たいのに、術者はその外にいる現状。
はて?
玲くんがぼそりと言った。
「危険察知能力に優れたイヌが、裏世界から飼い主連れて戻ってきて、周涅の妹使うかして周涅を見つけ出して、この術を破るなんて…」
「玲様。そんな高尚なことは……幾らあの現実離れしたふざけたイヌでも無理かと」
「……だよね」
玲くんと桜ちゃんの会話に、全員が項垂れた。
「道がわからないなら、この世界を壊せばいいか?」
突如青く光りだす玲くんの体。
しかしその光が薄くなり消えた。
「どうしたんだい、師匠。難しい顔をしているけど」
「いつも以上に…力の放出の際の、0と1の必要量と僕の精神力と体力が失われる」
「玲様。ではこの空間が……」
「黙って歩かされ続けたことにも意味があるのだろう。僕の力を縛るような仕掛けが、多分あったんだ。歩く……方角か? 陰陽道…可能性的には、凶の方角へずっと歩かされていて、その悪影響なのかな。
しかし、今さら方忌みや方違えをしても…。第一僕はそこまで陰陽道に詳しくないしな…」
玲くんがひきこもった世界で、なにかの呪文を唱えているようだ。
「由香ちゃんの邪眼は?」
「困ったことにお眠りさ」
由香ちゃんは八の字眉で肩を竦めた。
そんなときだったんだ。
「方法はひとつある」
それは天啓のように。
突如割り込んだのは――、
玲くんの肩の上にいる美咲さんだった。
ふらふらしながら、自力で立ち上がると、血の気の戻らない真っ白な顔であたし達を見渡した。
「だけどその前に。これだけ言わせて」
そして美咲さんはあたしに笑いかけたんだ。
あたしは反射的に、少し身構えてしまったのだけれど。
「玲の相手が貴方でよかった」
そしてあたしを抱きしめたんだ。

