「塔の加護がないせいか、"こいつら"の動きは異常だよ。前は抵抗していれば退いたんだ。食らい尽くすまでの勢いはなかった。今は違うだろう。私達までもを力の糧にしているかのようだ」


飢えているのは電脳世界なんだろうか。

電脳世界は、何故此処まで周涅にいいように操られるのか。


ああ、せめて此処に玲がいれば。

電脳世界を攻略するヒントくらい思いついただろうに。


「ねえ、櫂。どうしてもあの中に入りたいのかい? 今だって、退却するのですら命からがら。更に猛威をふるっているこの中に、切り込もうというのは無謀だよ。それにこの"すくりーん"とやらも、異分子を排除しようと躍起になるだろうさ」


不思議な牛女だけど、あの中を切り抜けられていただけでも、十分な猛者なんだろう。

伊達に俺の髪の色を変えた奴じゃねえ。



「行く。見ているだけではなんとでも言える。変える為には、動かないといけない。指を咥えて、奇跡を信じるのはガラじゃない。

奇跡を起こすのは、俺達人間だ」


決してブレねえ櫂の決心。

どんなに危険なものであろうと、そして助けたい住人の生死がわからない状況であろうとも。


「俺も同感」



こんな櫂だからこそ、俺は着いていきたいと思ったのだから。


こんな俺でも役に立てるのなら。

とことん役立ててくれよ、櫂。

俺はどこまでもお前の信じた道を、共に走るから。



俺はそう願いを込めて、笑った。



「さあ、ここからは僕の活躍だね!!」



俺の頭の上でリスが…ふんぞり返っているのだろう。


銃弾9発。

肝心要はこんなチビリス。


確かに捨て身で、無謀。

だけど、僅かにでも望みがあるのなら。


「此処まで言っても、まるで聞く気がないとはね。ウチの連中以上の硬い頭だねえ」


牛女が俯いた途端、乳がぶるんと大きく揺れた。


「人数が足りないんだろう? だったら、私を代表して連れて行きなよ。私は…あんた方でいう、異能力がある。それは動きを止める対抗手段くらいにはなるだろうさ。今もそれでスクリーンを酸化してきたんだし」


「睦月殿!!」


そして牛女は、驚く忍者達を見渡して言ったんだ。


「おばあちゃんの代理として、お前達に命じるよ。本当は私はこういうのはガラじゃないし、上から目線っていうのは死ぬほど嫌いなんだ。だからこれは、私の最初で最後の命令だ。

いいかい、お前達は此の場から動くんじゃない」