シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



そんな俺達の狼狽に気づかず、牛女は言い続ける。


「私は黙っていたけどね、元々あの言葉は…私にとっては気持ち悪い旋律でしかなかったんだよ。

だけど、それは私達をきちんと守っていたからね、ありがたいものとして聞き流してきた。こんな風に、私達を追い詰めるものではないんだよ」


悲鳴のような声だった。


「"すくりーん"があの言葉で私達を攻撃しているのなら。塔を飲み込もうとしているのは、その地下の魔方陣に関係しているのかもしれない。魔方陣が破壊されれば、もしかして"すくりーん"は力を無くすかもしれない。だけどさ、地下を破壊するということは…結局はあの塔も崩れてしまう。そんな危険なこと、試したくないよ」


「……。なあ櫂。周涅は……魔方陣の力で更に力を拡大していたのか? あいつそこまで見越して動いていたのか? 裏世界に名前が挙がっていない男が…? なんだか出来すぎのような気もする」


俺のぼやきに、櫂が小さく呼応する。


「魔方陣設置を示唆したのが異人であるのなら、彼らに指示を出したのは久涅だ。だとすれば。黄皇の意思を継ぐために、周涅と示し合わせて前もって動いていたことになる。黄皇を蘇らせ力を与える為か、凶言を土地に蔓延させてこの土地に邪気を根付かせ…いずれ遠隔的に裏を潰す力の糧とする為か」


「久涅は……悪い奴じゃないよ!!」


牛女が櫂を睨み付ける。


「久涅は……私達が生きる術を、世界を!! 構築してくれたありがたい奴なんだよ!! お前に久涅のなにが判るんだい!!」

「やめろ、牛女。仲間うちで今揉めてどうするんだ。櫂も、久涅のことは言葉を選んだ方がいい。牛女は興奮するから」

「ああ……」


俺の仲裁に、ふたりと気まずそうに溜息をついた。



俺は"もしも"を考える。


もしも、牛女達が死んでいたのなら。

死者の生きる規範を整えた久涅にとって、死者にありがたがれるほど……滑稽なものはねえだろう。


どうなんだろう。


こいつらは――

本当に生きているのか?


黄皇を倒すために魔方陣を壊したら。

久遠だけではなくこいつらもまた、命の危険になるのか?

今の俺達には、魔方陣を壊してみないと真実は判らねえ。


ふざけやがって!!