シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



俺が聞こえているものは、はっきりとした具体的な言葉として聞こえては来ていない。

次第にその言葉になっていくのだろうか。


「私達が使っていたのは、久涅や久涅が連れた異人が教えてくれたもので、この呪文は私達の身を守る為のありがたい言葉だった。恐ろしい術の呪文だということは聞いていた。だけど私達は全員が全員、力があるわけではない。

だから異人達は私達が呪言を唱えれば発動出来るようにと、あの塔がある場所の地下に作ったんだ。力が発現しやすくなる、増幅器を」

「増幅器?」

櫂が目を細める。


「ああ。あんた達の言葉で言えば、魔方陣」


俺達は顔を見合わせた。


魔方陣とは、"約束の地(カナン)"にもあった…木場にもあった、あれらと同じ種類のものなんだろうか。

そして小猿の兄貴を蘇らせているもののひとつか?


「その力が塔の力を増幅させて、あんた達に最初に見せた…侵入者を遠ざけるこの世界の守護者(ガーディアン)となる幻影となりえてたんだよ」


ああ、すげえ嫌な予感が胸をよぎる。


「櫂。まさかこいつら……。

久遠と同じ状況じゃねえよな」


口に出しては言えねえ。


"もしかして、魔方陣の力で生き長らえているのか?"


など。


ここの連中は、誰もが生きていると思っている。

俺らもそう思っている。


だからこいつらが焦がれる太陽がある――、

俺達が住む表世界に、共に生きていけるような…差別ない場所を作る方法を模索していたんだ。


櫂を筆頭に、まさにこれからという時に。


なんで魔方陣がこの世界にもある?

なんで増幅の役割が魔方陣でなければいけなかった?


櫂は答えねえ。

だが唇が微かに戦慄いているのが判る。


櫂も、信じたくはないんだろう。

この世界の住人は、既に死んでいるのだと。


もしそうであるならば――。


ここの住人は、この世界からは出られねえ。

どんなに外界に思いを馳せても、希望を持って外界に赴いた途端に、その身は朽ち果てる。



僅かな――

あってはならねえ可能性。


それは希望に模倣された…絶望だ。