「冗談じゃ…「馬鹿言うな!!」
俺の声に被せるようにして、櫂が荒げた声を向けた。
その様子に、忍者達は怯んだ様子だった。
「今ですら十分犠牲になっているんだ、これ以上はさせるか!! 命を軽んじるな!! 必ず俺達がなんとかする!!」
「無理ダ…。アれは…いつモとハ違ウ。塔が崩れレバ…此の世界を守ルモのはナクナり、必然ト我ラの命もナくナル。ならバ…」
「だから!? 捨てていい命ではないだろう!!」
激高する櫂。
芹霞以外に関して、珍しく感情を露にさせた姿に、8年来の幼馴染である俺ですら、息を飲む。
「塔を壊させない!!」
「気持ちは判るけどさ……」
牛女のお出ましだ。
おっさんみたいな酔っ払い姿を返上し、乱れた着物ではなく…女忍びのような動きやすい格好をしているが、相変わらず乳はでかい。
こいつも戦っていたのだろう。
頬に傷がある。
顔に傷つけても乳は無事なのはなんでだ?
「過去何度もこの世界に"こいつら"は現われた。都度塔の加護がいい方に作用して、私達でなんとか撃退してこれた。いわば私達は、こいつらに関しては経験値がある。
だけど今、塔の加護がえられない。あんたら…私達を守る強い結界張ってくれたんだろう? それを盾にしても、私達の経験だけでは切り抜けられない程、あいつらは完全捕食者として動いている。
今までとなにかが違うんだ。しかも、聞こえて来ないか。声が」
「お前、聞こえるのか、あの声!!」
「煌……?」
櫂が怪訝な顔を俺に寄越した。
「実は声が聞こえるんだ、スクリーンの向こうから。最初はざわざわとした音だったんだけど、今は次第に言葉になりつつある」
「ああ、あんたはウジガミ様だからね。特に邪気に対する感応力は、普通の聴力としても私以上のものがあるんだろうよ」
「お前並って…なんでお前が引き合いに出るよ?」
「私は、あんた達のいう"瘴気"という類が、音として捉えられる。憂鬱になるような陰鬱な音だ。あれと同じ音色。蛆の…闇の言葉と」
「ワマス、ウォルミウス、ヴェルミ、ワーム…?」
それはかつて忍者が老いたミイラや巨大な蚕の孵化する様を、幻影として見せていた時に唱えていた言葉じゃねえか。
その言葉を逆に利用して、櫂の闇の力が忍者達の力を上回り……忍者達の姿を見ることが出来のだけれど。
櫂のその言葉に、睦月は頷いた。
「そう。その言葉が奏でる音色と同じなんだ」

