黙した櫂に驚きが見えないのは、想定内だったのか。
それでも小さな舌打ちの音は聞こえてきた。
「……。布陣…だからスクリーンは形態を変えて、本来の目的に沿った形に動いているのか。スクリーンは、恐らく術者の"思念"の顕現。周涅はそこに電脳世界を繋いだということか。そして俺らの顕現力を凌駕する…周涅の力はそれほど凄まじいのか」
櫂は苛立たしげに髪を掻上げた。
「このスクリーンは、陰陽道の術の顕現。周涅の攻撃的な意志がある限り、その力を凌がねばこれを破ることは出来ない。このままだと、電脳世界に有効な弾丸で祓い続けない限り、この術に飲み込まれる。飲み込まれたあとが平和だとは思えない。ただ単に殺したいだけなら、ここまでの仕掛けをしないだろう」
同感だ。
俺にだけ聞こえる声が、少しずつ言葉になってきている。
まるで――
供物を捧げる呪文のような、そんなおぞましさを感じて。
言えねえよ、そんなこと。
今考えるべきは、俺達の最悪な事態の具体性よりも、打開策だ。
だけど――。
「櫂、簡単に言うけどよ、玲でもねえのに…例えあいつでも、電脳世界を利用して術をかけれるって、そんなこと……」
「周涅だから、出来るかもしれない。本当に、あいつは凄いんだよ!!? だけど」
櫂に代わり、小猿が泣きそうな顔で言った。
「兄上は……周涅以上だよ?」
小猿の藍鉄色の瞳が、哀しみに潤んでいる。
「兄上がこの事態を知らないはずがない。俺達の生死は別にして、この世界の存在を兄上が知っていて、どうして周涅に許可するのかなあ。人がいるってこと判っていて!! 昔の兄上ならそんなこと絶対しなかったのに!!」
周涅の裏には雄黄が居るのは間違いねえ。
なにを企んでいるのかそんなことより。
この仕業が周涅だというのなら、その周涅が絶対服従している…黄皇たる雄黄の力はどれほどよ?
益々追い詰められたような気がして、
くらり。
俺は眩暈を感じた。

