そんな俺の杞憂をものともせず、櫂はその迷いない真っ直ぐな瞳を、小猿の肩に居る小小々猿に向けたんだ。
「護法童子。お前は、なにを感じていた?」
櫂は少し身を屈み、小小々猿の目線の高さに目を合わせた。
「お前は、外部からの……どんな力に惑わされようとしていた?」
それは意外な言葉で。
「ま、惑わされ…!? ゴボウちゃん、惑わされようとしてたの!?」
俺以上に驚いた小猿が、甲高い声をひっくり返した。
自分が使役している式神の状態を把握出来ねえってなによ?
小猿にはまだまだ課題があるらしい。
小小々猿としても、小猿の命令もないのに勝手にふらふらしていたのが心苦しいのか、小猿の顔で眉を下に垂らした。
「すまぬ翠殿。我は武神将、戦神。しかし、我の力及ばずして、この陣の術者の力に阻まれた。本来なら我がこの陣を吹き飛ばして、翠殿とそのお仲間を救うのが当然なれど、我にはせめて"方忌み""方違え"となるよう、力を張ることが精一杯で……。それも時間の問題と……」
「方忌みって…陰陽道の凶方を避けることだろ? 方違えって…方忌みを避ける方法だろ? なんで陰陽道が関係あるんだよ、ゴボウちゃん!! この気持ち悪いスクリーンの光景が、陣ってなに!?」
カタイミ…。
カタガタエ…。
なんか聞いたことがあるような…。
………。
あ、緋狭姉だ。
緋狭姉がそんなこと言ったから、"約束の地(カナン)"に運んだんだ。
小小々猿はまだ情けない猿の顔で、力なく言った。
「翠殿。この白い"すくりーん"とやらが構成しているのは、陰陽道の布陣。異空間を繋げるために、9つの石碑を打ち立て、それによって凶相を配置し、その場の気を乱して惑わせる"裏九星の陣"」
すると小猿が叫んだ。
「九星の陣って……周涅の得意な術じゃんか!! 裏だろうと表だろうと……そんな陰陽道の秘儀を使えるのは周涅しか知らないよ!!」
絶望的に――。

