「電脳世界…だから、電子基盤か?」
自嘲気に言い捨てる櫂は、目を細め何だか腑に落ちねえ顔つきで。
「構成分子が0と1だとしても…、あの形に固定化させようとしているのは、電脳世界の意思ではない気がする」
そう言ったんだ。
「俺に玲ほどの電脳世界を感じる力があればいいが、それに限っては皆無だから、ただの直感でしかないけれど。あれは視覚的にあまり演出臭い。……陳腐な人間が作ったような、B級レベルだ」
電脳世界の意思なんか知らねえ。
意思があるだの言葉があるだの言い張っているのは玲だけだ。
電子基盤が電脳世界のものだという確証はねえんだ。
電子基盤を生み出したのは人間だし。
けどどんなに悪いセンスをしていたって、あの"魔法のスクリーン"や"モグラ"を作れるのなら、頭脳は間違いなく俺以上。
それをB級レベルというのなら、俺…何級よ?
俺からすれば、ノーベル賞とるよりも凄いことに思えて仕方がねえ。
つーか、電脳世界のセンスってどんなもの?
「確実に判ることは」
櫂が俺達を見た。
「あれは、裏世界を攻撃する側のもの。だから裏世界の住人が生み出したものではない」
確かに、裏世界の住人は、裏世界を守る為に果敢に戦いを挑んではいるけれど、スクリーンの攻撃から逃れようとする切迫した姿は演技ではねえと思う。
命がかかったゆえの真剣さは、こけしや玲の父親クマを始め、アホハットでも見られた。
定期的に肉食獣が襲いかかってくるような――
まるでジャングルの草食動物の如く、一抹の怯えがあった。
五皇ですら、そうだったんだ。
「じゃあ、あの"モグラ"は、誰が生み出したものだと?」
俺の問いに、櫂からの返事がなかった。
「ねえ紫堂櫂は、"約束の地(カナン)"でスクリーンをこうやって銃で撃って倒したの?」
小猿の問いに、櫂は小さく頭を横に振った。
「久遠の術に助けられた」
面白くなさそうな顔をする櫂だけれど、事実歪めてまで自分の手柄にしないところが、らしいと言えばらしい。
「それにここまでの攻撃性はなかったから、一掃はしていない」
「ふうん? でも"約束の地(カナン)"では、銃なくても住人に対抗手段があったということだろう? だけど…裏世界は違うよね。俺達、強さ求めて裏世界に来たけど、実際は弱い世界だったということ? いやだけど結構苦労して来たよなあ」
小猿の率直な感想に、俺と櫂は顔を見合わせた。
表と裏と電脳世界の強弱関係――?

